シェシ

シェシ（Sheshi）

概要

シェシは紀元前1652年頃から約紀元前1638年にかけて在位した、古代エジプトのファラオです。その統治期間に関連する印章が大小合わせて400個以上発見されており、これは同時代の他の王たちと比較しても最も多い記録となっています。これらの印章は、南のヌビアから北のパレスティナにかけて広く分布しており、その影響力を示す重要な証拠とされています。

所属王朝

シェシは多くの研究者にとって広く知られた王ではありますが、彼がどの王朝に属するかについては未だに議論が続いています。古代のファラオに関する貴重な史料として知られるトリノ王名表は、残念ながら著しい損傷を受けており、特に第13王朝以降の情報はかなり不足しています。そのため、シェシに関連する具体的な記載を特定することが非常に難しい状況です。また、アレクサンドリアの司祭マネトーによる『エジプト史』も重要な資料ですが、彼の記述はギリシャ語であり、王の名前もギリシャ語に改変されているため、解釈が困難です。

第15王朝説

シェシはマネトーによって記録された第15王朝のヒクソスの王、サリティスと同一視されることがあります。この説は、ヌビアで発見されたシェシの印章が、エジプトに侵入したサリティスが土着の政権である第13王朝に対抗するためにヌビアの勢力と同盟を結んだ証拠と考えられています。ただし、ヒクソスが実際に支配した地域は限られており、彼らが上下エジプト全土を直接統治していたというマネトーの記述には疑問が残ります。さらに、同時代の別の王、サキルハルとシェシを同一視する見解も存在します。

第16王朝説

また、シェシが第15王朝とは別のヒクソス系の王朝である第16王朝に属しているという説も提唱されています。この王朝は第15王朝の配下にある諸侯の連合と見なされており、シェシの名前が個人名ではなく、セム語系の首長たちの称号である可能性も指摘されています。この説は、シェシの印章の多さとは裏腹に、彼に関連する彫像や記念碑が全く見つかっていないことを背景にしています。

第14王朝説

さらに、シェシが第15王朝よりも前に存在した第14王朝に属していたという説も存在します。この理論の根拠としては、シェシの名前には「外国の支配者」を意味するタイトルが付与されておらず、また、彼の即位名「マアイブラー」がエジプト式であることが挙げられます。他の王は、「外国の支配者」を意味する名を持つ一方で、シェシはそのような特徴を持っていないことが注目されています。さらに、第13王朝時代に放棄され、その後使用されなくなった要塞から発見されたシェシの印碑も、彼の統治に関する重要な証拠とされています。

参考文献

• - ピーター・クレイトン『古代エジプトファラオ歴代誌』吉村作治監修、藤沢邦子訳、創元社、1999年4月。
• - エイダン・ドドソン、ディアン・ヒルトン『全系図付エジプト歴代王朝史』池田裕訳、東洋書林、2012年5月。
• - K.S.B. Ryholt, The Political Situation in Egypt during the Second Intermediate Period, c.1800-1550 BC (Carsten Niebuhr Institute Publications, vol. 20. Copenhagen: Museum Tusculanum Press, 1997).

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