シェトランド (テレビドラマ)

シェトランド（Shetland）

『シェトランド』は、イギリスで制作されたクライムドラマシリーズです。スコットランド北方に位置するシェトランド諸島という、地理的に隔絶された美しい孤島を舞台に、そこで発生する難事件に立ち向かう刑事たちの姿を描いています。ITVとBBC Oneにより制作され、2013年3月にBBC Oneで第一シリーズの放送が開始されました。

物語の舞台とテーマ

ドラマの舞台であるシェトランド諸島は、冷涼な気候と独特の景観を持つ土地です。島民同士のつながりは非常に濃く、地理的な隔絶からコミュニティは閉鎖的な性質を帯びています。このような環境では、人々は互いの顔を知り、日々の暮らしの中で無意識のうちに嫉妬や怨恨といった感情を募らせていきます。こうした人間関係の機微が絡み合い、時に巧妙なトリックを伴う殺人事件へと発展していくのが本シリーズの特徴です。

物語の中心となるのは、シェトランド警察署のジミー・ペレス警部です。演じるのは俳優のダグラス・ヘンシュオール。彼は島の出身者であり、閉鎖的なコミュニティの内情を理解しつつも、客観的な視点で事件の真相に迫ります。ペレス警部の右腕となるのは、島民でもあるサンディ・ウィルソン巡査（スティーブン・ロバートソン）です。彼らは島特有の事情に翻弄されながらも、一歩ずつ捜査を進めていきます。

制作背景とシリーズの変遷

本シリーズは、作家アン・クリーヴスによる同名の小説四部作を原作としています。初期シリーズ、特に第一シリーズは、クリーヴスの小説『野兎を悼む春』を基にした二部作として制作されました。この第一シリーズはITVによって制作され、放送時には800万人もの視聴者を獲得するなど高い評価を得ました。

続く第二シリーズからは、BBCが制作を委託し、2014年に放送されました。このシリーズは、『大鴉の啼く冬』『水の葬送』『青雷の光る秋』といった原作小説に基づいた三つの物語が、それぞれ二部作形式で描かれました。制作プロデューサーはピーター・ギャラガーが担当しています。

第三シリーズ（2016年放送）からは、シリーズの形式が大きく変更されました。このシリーズ以降は原作小説に依らず、テレビドラマとしてオリジナルの脚本が執筆されるようになります。全6話構成となり、各エピソードが独立した物語であると同時に、シリーズ全体で一つの大きな事件を追う連続ドラマとしての側面も持ち合わせるようになりました。このシリーズからは、キアラン・ハインズやアナ・チャンセラーといった俳優がキャストに加わっています。

第四シリーズ（2018年放送）以降もオリジナル脚本による6話構成が続き、スティーヴン・ウォルターズやネーヴ・マッキントッシュなどが新たに登場しました。その後もシリーズは継続され、2020年4月時点では第七シリーズまでの制作が決定しています。第六シリーズは2021年秋に放送が発表されました。

撮影とロケ地

ドラマの撮影は、その舞台となるシェトランド諸島の雰囲気を再現するために工夫が凝らされています。制作チームとキャストは通常、スコットランド本土のグラスゴーを拠点としていますが、多くのシーンは本土内でシェトランド諸島の風景や建築物を彷彿とさせる場所で撮影されています。具体的な撮影地としては、レンフルーシャーのキルバーシャン、ダグラス・ヘンシュオールの出身地であるバーヘッド、エア、アーバインなどが挙げられます。

ヘンシュオール自身が2019年のインタビューで語ったところによれば、ペレス警部の自宅はキルバーシャン、農場の内装はアーバイン、警察署はバーヘッドで撮影されているとのことです。もちろん、実際のシェトランド諸島でも一部のロケが行われており、主要港であるラーウィック、そこに近づくフェリー、ラーウィックの南にあるウェスター・クアフといった場所が登場します。また、第四シリーズでは自然保護区が登場するエピソードのためにフェア島での撮影も実施されています。

日本での展開

日本では、ミステリー専門チャンネルであるAXNミステリーにて放送されています。2015年4月に初めて放送され、この際にはイギリスでの第一シリーズと第二シリーズをまとめて「シーズン1」として、週に2話のペースで放送されました。その後も放送は続き、2020年5月にはシーズン3とシーズン4が一挙放送されるなど、継続的にファンに届けられています。

閉鎖的な島を舞台に人間の業を深く描き出す物語、美しいながらも厳しい自然の風景、そして魅力的な登場人物たちが織りなす『シェトランド』は、多くのミステリーファンを惹きつけている作品です。

もう一度検索