シェリル・ミルンズ

シェリル・ミルンズ（Sherrill Milnes, 1935年1月10日 - ）は、アメリカのバリトン歌手であり、その輝かしいキャリアで世界中のオペラファンを魅了しました。1965年から1997年まで、彼はメトロポリタン歌劇場の契約歌手として活躍し、653回もの出演記録を誇ります。これは、彼が同歌劇場においていかに重要な存在であったかを示しています。

メトロポリタン歌劇場での活動に加えて、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、ロイヤル・オペラ・ハウスなど、ヨーロッパの主要な歌劇場にも数多く出演し、国際的な名声を確立しました。彼の才能は世界中で認められ、数々の舞台で喝采を浴びました。

ミルンズは、イタリアオペラを中心に幅広いレパートリーを持っており、数多くの著名な演奏家と共演しています。モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』では、カール・ベームとのスタジオ録音、ヘルベルト・フォン・カラヤンとの映像記録が残されており、彼の卓越した歌唱を今に伝えています。

近年では、ノースウェスタン大学で教鞭を執る傍ら、自らV.O.I.C.Experience基金を主宰し、アートディレクターとして後進の育成に力を注いでいます。彼の知識と経験は、次世代のオペラ歌手たちに受け継がれています。

来歴

イリノイ州の酪農家に生まれたミルンズは、幼少の頃から歌唱に優れ、ピアノや管弦楽器など音楽の才能に恵まれていました。ドレイク大学とノースウェスタン大学で音楽を学び、ローザ・ポンセルに師事した後、合唱団に参加しました。その後、ボリス・ゴルドフスキーが主催する歌劇団に加わり、『ドン・ジョヴァンニ』でマゼット役を演じ、オペラ歌手としてデビューを果たしました。

翌年には、ポンセルがスーパーバイジングを務めていたボルチモア歌劇場で、『アンドレア・シェニエ』のジェラール役で出演しました。1964年には、メトロポリタン歌劇場のオーディションに合格し、『ファウスト』のヴァレンティン役で同劇場へのデビューを飾りました。

1964年にはミラノのテアトロ・ヌオーヴォにも出演し、1970年にはウィーン国立歌劇場における『マクベス』への出演を機に、ハンブルク、パリ、ロンドン、ブエノスアイレスなど、世界各国の主要な歌劇場に出演し、国際的な名声を確立しました。

評価

ミルンズは、その幅広い声域と豊かな声量に加え、演技者としての高い表現力も高く評価されています。しかし、アリアの中で口笛を吹いたり、派手に椅子ごと倒れこむなど、過剰とも思われる舞台上でのパフォーマンスに対しては、批判的な意見も存在します。

ミルンズは、ある意味で時代の寵児とも言える存在でした。当時、ゴッピやプロッティ、タッディといったベテランバリトン歌手が下り坂を迎える中、バスティアニーニやレナード・ウォーレン等が早逝し、スターバリトン歌手が不足していました。また、デビュー前後の時期に各レコード会社の専属歌手契約制度が崩壊し始めていたため、様々なレーベルで同時に活動することが可能になったことも、彼の成功を後押ししました。

主な録音とレパートリー

（詳細な録音とレパートリーについては、参考文献をご参照ください）

脚注

（脚注の内容は省略）

参考

"American Aria - From Farm Boy to Opera Star" by Sherrill Milnes, Dennis McGovern ISBN 0028647394 / 0-02-864739-4
音楽之友社刊 『名演奏家事典 【下】』 1015頁

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