シエラザード (1963年の映画)

シエラザード：砂漠のロマンスと陰謀の渦

1963年、世界を魅了したフランス・イタリア・スペイン合作映画『シエラザード』。ピエール・ガスパール＝ユイ監督による本作は、70mmフィルムという当時としては画期的な技術を用いて制作された超大作です。その壮大なスケールと、アンナ・カリーナ演じるシェヘラザードの美しくも悲しい運命が、観客を忘れられない世界へと誘います。

物語は、西暦809年のバグダッドを舞台に展開します。ヨーロッパを統一したフランク王国のシャルルマーニュ大帝は、親善使節団をバグダッドへ派遣。その使節団の一員であるルノー（ジェラール・バレー）は、砂漠の旅の途中で、盗賊に囚われたシェヘラザード（アンナ・カリーナ）と出会います。シェヘラザードは、アラビアのハルアン王の王妃候補でしたが、ザカール将軍（ホルヘ・ミストラル）の陰謀に巻き込まれ、囚われていたのです。ザカール将軍は、自分の愛妾シーリーン（マリルー・トロ）を王妃に据え、王位を乗っ取ろうと企てていました。

ルノーは、シェヘラザードを救出する過程で、彼女に恋に落ちます。シェヘラザードは、王の妃に選ばれますが、ルノーとの愛は禁断の恋として、二人の運命を複雑に絡ませます。一方、ザカール将軍とシーリーンは、王位奪取の機会をうかがっていました。彼らは、ルノーとシェヘラザードを再び引き合わせ、二人の再会をハルアン王に見せます。王の怒りにより、シェヘラザードは賤民に落とされ、ルノーはむち打ちの刑に処せられます。

フランク王国の騎士団がシェヘラザードを救出しようとするも、ハルアン王はシェヘラザードへの愛ゆえに彼女を取り戻します。しかし、ザカール将軍の反乱軍が王宮を襲撃。ハルアン王とシェヘラザードは、危機一髪の状況で脱出を図ります。逃亡の途中で、ルノーと騎士団と再会したハルアン王は、彼らと協力して反乱軍を鎮圧します。

激戦の末、重傷を負ったハルアン王は、ルノーとシェヘラザードを病床に呼び、二人の結婚を祝福します。二人の愛は、政治的な陰謀や、運命の残酷さを乗り越え、ついに実を結ぶのです。

『シエラザード』は、『千夜一夜物語』のシェヘラザードと、ケルト神話に伝わる悲恋物語『トリスタンとイゾルデ』の要素を巧みに融合させた、独特のロマンスです。アンナ・カリーナの美しさ、そしてヌーヴェルヴァーグの巨匠ジャン＝リュック・ゴダール（カメオ出演）の存在感も、この映画をさらに魅力的なものとしています。1963年のカンヌ国際映画祭では、フランス映画高等技術委員会大賞を受賞。日本では松竹映配が配給し、大々的に公開されました。70mmフィルムという、当時としては革新的な技術による映像美も、本作の見どころの一つと言えるでしょう。

豪華なセット、衣装、そして、砂漠の壮大な風景。数々の美しいシーンは、今でも多くの映画ファンを魅了し続けています。歴史とロマンス、陰謀と愛が複雑に絡み合う『シエラザード』は、まさに忘れられない映画体験を提供してくれるでしょう。

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