70mmフィルム

70mmフィルムについて

70mmフィルム（または65mmフィルム）は、通常の35mmフィルムよりも幅が広く、高解像度で高品質な映像を記録・上映できるフィルム規格です。映画の視覚効果やIMAXシアターなど、特別な映像体験を提供する目的で使用されてきました。

構造と特徴

カメラ撮影用のフィルムは65mm幅ですが、映写機用のフィルムは、サウンドトラックを記録するための磁気ストライプを追加するために、両端に2.5mmずつ幅が広げられ、70mm幅となります。この磁気ストライプには、6つのサウンドトラックが記録され、マルチチャンネル音声再生を可能にします。最近の70mmフィルムの多くはデジタル音源を暗号化していますが、古いフィルムにはアナログの磁気ストライプが用いられています。

1フレームの高さはパーフォレーション（送り穴）5つ分で、アスペクト比は2.20:1です。70mmフィルムに対応していない映画館では、35mmフィルムに変換し、さらにシネマスコープ/パナビジョン形式の2.35:1に調整して上映されます。

用途

特殊効果

デジタル合成技術が普及する以前は、視覚効果を実写と合成する際、フィルムの複製を繰り返す必要がありました。そのため、画面の品質が劣化し、観客に合成であることが見破られることがありました。しかし、70mmフィルムを使用することで、画質の劣化を最小限に抑えることが可能でした。映画監督のスタンリー・キューブリックは、その画質の高さにこだわり、『2001年宇宙の旅』で70mmフィルムを使用しました。また、視覚効果監督のダグラス・トランブルも、『未知との遭遇』などで、光学合成が必要なシーンを65mmフィルムで撮影し、対応する光学プリンターを開発しました。1980年代後半には、リチャード・エドランドが『ゴーストバスターズ』や『ダイ・ハード』で65mmフィルムを使った光学合成を行っています。

IMAX

IMAXは、70mmフィルムを水平方向に送り、1コマに使うフィルム面積を広げることで、高精細な映像を実現するシステムです。70mmの幅を垂直方向に使い、水平方向には15パーフォレーション分のフィルムを使用します。IMAX Dome（オムニマックス）も同様に、70mm×15パーフォレーションのフィルムを使用します。IMAXのスクリーンで70mmフィルムを上映するシステムには、ダイナビジョンやアストロビジョンがあります。これらのシステムは、70mmフィルムを垂直方向に送ることで1フレームのフィルム使用量を削減しています。ダイナビジョンは70mm×8パーフォレーション、アストロビジョンは70mm×10パーフォレーションまたは8パーフォレーションのフィルムを使用します。アストロビジョンは主に日本のプラネタリウムに設置されています。

ブローアップ

ブローアップとは、上映用フィルムを光学的に拡大変換し、より大きなフィルムで上映できるようにする技術です。1950年代後半から1990年代半ばにかけて、35mmフィルムを70mmフィルムに変換して上映する手法が一般的でした。これにより、70mm上映に対応した映画館で、より鮮明で安定した映像と、6チャンネルの磁気録音による高品質なマルチチャンネル音声を楽しむことができました。ただし、デジタル音響システムが普及すると、音声面での優位性は失われました。また、70mmフィルムのプリントは、35mmフィルムに比べて高価です。

スペック

スタンダード65mm (5/70)

使用レンズ: 球面レンズ
1フレームのパーフォレーション数: 5
フィルム送り方向: 縦送り
フレームレート: 24フレーム/秒
撮影時アパーチャー: 52.48mm x 23.01mm
投影時アパーチャー: 48.56mm x 20.73mm
アスペクト比: 2.2:1

Ultra Panavision 70 (MGM Camera 65)

基本仕様はスタンダード65mmと同じ
撮影時、レンズの前に特殊な光学アダプターが必要
投影時アスペクト比: 2.76:1

Showscan

基本仕様はスタンダード65mmと同じ
フレームレート: 60フレーム/秒

IMAX (15/70)

使用レンズ: 球面レンズ
1フレームのパーフォレーション数: 15
フィルム送り方向: 横送り(右から左)
フレームレート: 24フレーム/秒
撮影時アパーチャー: 70.41mm x 52.63mm
投影時アパーチャー: 撮影時より垂直軸が2mm以上短く、水平軸が0.4mm以上短い
アスペクト比: 撮影時1.35:1, 投影時1.43:1

オムニマックス

基本仕様はIMAXと同じ
特殊な魚眼レンズを使用
ドームスクリーンに楕円状に投影

オムニビジョンシネマ 180

基本仕様はスタンダード65/70と同じ
180度のドームスクリーンに合った特殊な魚眼レンズを使用
1995年に、70mmの6トラックアナログサウンドからDTSデジタルサウンドに変更

ダイナビジョン (8/70)

劇場がドーム状の場合は魚眼レンズを使用、それ以外は球面レンズを使用
フィルム送り方向: 縦送り
フレームレート: 24-30フレーム/秒
撮影時アパーチャー: 52.83mm x 37.59mm

アストロビジョン (10/70)

フィルム送り方向: 縦送り
オムニマックス用のネガから上映フィルムをプリントされることが多い
ドーム状の劇場向け、日本のプラネタリウムで使用
音声記録は無し、パーフォレーションはフィルム端近くにある

関連リンク

The American WideScreen Museum
in70mm.com
The History of the Todd-AO Projector

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