シギショアラ

シギショアラ：中世の宝石箱

シギショアラは、ルーマニアのトランシルヴァニア地方に位置する都市で、その美しい歴史地区はユネスコの世界遺産に登録されています。12世紀にドイツ人職人や商人（トランシルヴァニア・ザクセン人）がハンガリー国王によってこの地に招聘され、定住・防衛を担ったのが始まりです。彼らは街を築き、発展させ、シギショアラは中央ヨーロッパにおける重要な軍事拠点、そして商業の中心地として繁栄しました。

歴史

1191年にはすでにザクセン人が定住していた記録が残っており、1337年には王の定住地として都市特権を授けられました。神聖ローマ帝国各地から職人が集まり、ドイツ人工芸家と職人が都市経済を支え、要塞化された建物が都市を守りました。16世紀から17世紀には、15のギルドと20の手工芸工房があったとされています。バロックの彫刻家エリアス・ニコライもこの都市で活動していました。

また、ワラキア公ヴラド2世ドラクルは、シギショアラへ亡命。彼の息子ヴラド・ツェペシュ（ドラキュラのモデル）はここで誕生しました。ヴラド2世はシギショアラで硬貨を鋳造させ、市のルーマニア語名を初めて記載した文書を発行しました。

17世紀から18世紀にかけては、軍事侵攻、大火、ペストの流行に見舞われましたが、街は復興を遂げました。1849年には近郊の平原アルベシュティでシェゲシュヴァールの戦いが行われ、ハンガリー軍がロシア帝国軍に敗れました。

第一次世界大戦後、シギショアラはハンガリー王国からルーマニア王国へ併合されました。

観光

シギショアラの見どころは、何と言っても保存状態の良い市壁に囲まれた旧市街です。

時計塔（Turnul cu Ceas）: 1556年に建てられた高さ64mの塔で、現在は歴史博物館となっています。街のランドマークとして親しまれています。
要塞: 12世紀にザクセン人が築いたもので、歴史地区に位置しています。
武器博物館: ヴラド公生誕地の隣にあり、中世の武器が展示されています。
石造りの階段: 木製の屋根で覆われた古い階段で、丘の上の教会と墓地へと続いています。
丘の上の教会: 多くのフレスコ画と納骨堂があり、ローマ時代の砦の上に建てられました。周辺にはドイツ人の墓石が並ぶ墓地があります。
ヴラド・ツェペシュの胸像: 時計台の見える生誕地周辺にあります。

毎年7月には、旧要塞内でシギショアラ中世フェスティヴァルが開催され、中世の雰囲気を楽しむことができます。

民族と宗教

市の人口構成は、ルーマニア人が76.06%、ハンガリー人が18.36%、ロマ人が3.51%、ドイツ人が1.92%となっています。宗教は、ルーマニア正教会が約75％、改革派教会が8.2％、カトリック教会が5.9％、ユニテリアン教会が3.7％となっています。

姉妹都市

シギショアラは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

ディンケルスビュール（ドイツ）
キシュクンフェーレジハーザ（ハンガリー）
バーデン（スイス）
ブロワ（フランス）
* チッタ・ディ・カステッロ（イタリア）

シギショアラは、中世の面影を色濃く残す魅力的な都市です。トランシルヴァニアを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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