シクロバルビタール

シクロバルビタールについて

シクロバルビタール（Cyclobarbital）は、バルビツール酸の誘導体として知られる睡眠薬です。この薬剤は、約30分で効果が実感できるものの、作用時間は短いため、長時間の睡眠を求める人には向かないと言えます。

日本においては、1946年に塩野義製薬によって「アドルム」という商品名で販売されました。当時、この薬は「平和の眠り」というキャッチフレーズで宣伝されており、新聞広告にも取り上げられていました。しかし、利用者の中には副作用が表れ、自殺を試みる事例が相次ぎました。特に、オーバードーズによる自殺者が多発し、こうした問題が社会問題化しました。これを受けて、1973年には日本国内での販売が中止されました。

ロシアでは、不眠症の治療薬として使用され、ジアゼパムとの合剤として販売されていました。具体的には、シクロバルビタール100mgとジアゼパム10mgを組み合わせた製品が一般用医薬品として流通していました。しかし、こちらも2019年に販売が停止されました。

シクロバルビタールは、その短時間作用型の特性により、一時的な睡眠導入を目的に使用されましたが、その危険性も兼ね備えていました。副作用や依存症のリスクから、使用には慎重さが求められます。その反面、薬の効用を求める人々にとっては高い需要があったことも無視できません。

この薬剤に関連する著名な事例も存在します。例えば、1949年に作家の田中英光氏は、前年に自殺した太宰治の墓前でアドルムを服用し、自らの命を絶つという悲劇的な事件が起こりました。また、坂口安吾氏は中年期にアドルム中毒に苦しんだ経歴があります。彼は治療を受けたり、留置所に入ったこともありました。さらに、1960年1月には火野葦平氏が自殺するという事件もあり、シクロバルビタールの危険性が改めて浮き彫りになりました。

シクロバルビタールは、短期的な睡眠を得るために利用される一方で、その背後に潜むリスクが多くの生命を脅かしました。そのため、現代では、より安全な治療法や薬剤が求められるようになっています。事例を考慮すると、睡眠剤の使用については、医師の指導の下で行うことが不可欠であると言えます。

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