火野葦平

火野葦平について

火野葦平（ひの あしへい）は、1907年1月25日に福岡県若松市（現在の北九州市若松区）に生まれ、本名は玉井勝則である。彼は昭和時代の小説家として、特に戦争と河童をテーマにした作品で知られ、多くのベストセラーを生み出した。文学への情熱は早くから育まれ、早稲田大学で英文科に在籍中に同人誌『街』を創刊するなど、文壇での活動をスタートさせた。

文学活動の初期

葦平は、労働運動に参加した影響から一度は文学から遠ざかるが、日中戦争の最中に『糞尿譚』を発表し、この作品が第六回芥川賞を受賞することとなる。戦時中にもかかわらず、彼の作品は人々の心をつかみ、特に『麦と兵隊』や『土と兵隊』などの「兵隊三部作」は高い評価を得て、300万部以上の売上を記録した。この成功により、葦平は「兵隊作家」として広く知られるようになった。

兵隊作家としての地位

『麦と兵隊』は、戦地から送られたリアルな従軍記であり、この作品は英訳され、著名な作家であるパール・バックにも称賛された。彼の作品は戦争の悲惨さを描きつつも、兵士たちの人間性を強調し、従軍芸術家としての活動も盛んであった。また、彼は河童をテーマにした作品も多く、『河童昇天』や『河童』などの著作がある。自身が描く河童は風刺的であり、時には教訓的な面をも持っていると語っている。

戦後の活動と評価

戦後は彼の過去が戦犯作家として指弾される時期もあったが、その後も精力的に執筆を続け、自伝的な長編『花と竜』や、自らの戦争責任に触れた『革命前後』などを発表。特に『花と竜』は、九州男児の生き方を色濃く反映した作品として評価され、再び流行作家の地位に戻った。

最期と遺産

火野葦平は1960年1月24日に若松市の自宅で亡くなった。享年52歳ということになるが、実際の誕生日を基準にすると53歳であった。彼の死因は睡眠薬による自殺と判断され、その経緯は社会に衝撃を与えた。晩年、友人から発見されたノートには、死に対する漠然とした不安が綴られており、彼の心の内を知る貴重な手掛かりとなっている。

受賞や記念館

彼の文学的業績は高く評価され、1950年には日本芸術院賞を受賞。現在、若松区には彼の生涯の大半を過ごした建物「河伯洞」が存在し、一般に公開されている。この建物は彼の河童への愛情から名付けられており、文学愛好者にとっては貴重な遺産である。また、彼の著作は今も多くの人々に読み継がれており、彼の独自の視点と文学が持つ力を感じさせる。

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