シグマ (レーザー傷検査装置)

企業概要

シグマ株式会社は、広島県呉市に本社を置く機械器具メーカーです。主要な事業分野は自動車部品の製造ですが、これに加えて、特殊な技術を用いた機械装置の製造も手がけています。具体的には、穴のあいた製品の内面をレーザー光で高速かつ自動的に検査する外観検査装置や、防犯関連装置などが含まれます。同社は特に傷検査装置の分野で高い技術力を有しており、国内市場で約70%、世界市場でも約30%のシェアを占めるニッチトップ企業として知られています。その独自の強みが評価され、経済産業省による「グローバルニッチトップ企業100選」にも選定されています。

歴史と事業の変遷

シグマの歴史は1937年、呉市で創業したことに始まります。当初は呉海軍工廠向けの部品製造を担っていました。第二次世界大戦後、1947年には東洋工業（現マツダ株式会社）の指定工場となり、主に小型の精密自動車部品を製造する二次サプライヤーとして事業を継続しました。この時期は、売上の大部分をマツダからの受注に依存する経営体制でした。

しかし、1989年に下中利孝氏が社長に就任すると、マツダへの依存構造からの脱却と、独自の製品開発・提案型企業への転換を目指す方針が打ち出されます。自動車部品に関する開発能力を強化しつつ、新規事業の模索も開始。その取り組みの一つとして防犯関連製品の開発が進められ、1996年にはセキュリティ事業部を新設し、市場への参入を果たしました。また、同時期には、ダイセル株式会社向けにエアバッグ用インフレータやイニシエーターといった新たな自動車関連部品の製造も開始するなど、事業領域を着実に広げていきました。こうした多角化戦略は、バブル経済崩壊後のマツダの業績低迷に伴う受注減に対し、シグマの売上を維持する上で大きな支えとなりました。

ニッチトップ製品「穴ライザー」の開発

シグマのもう一つの柱となる事業、穴内面傷検査装置の開発は1998年頃に始まります。特許流通フェアで出会った半導体レーザーを用いた傷検査技術に注目した同社は、この技術を円筒形状部品の外面傷検査に適用できないかと考え、出展者であった産業技術総合研究所中国センターに共同研究を打診しました。2000年から始まった共同研究は予想以上の成果を上げ、シリンダーボア内部の傷検査装置という、より専門的な分野での共同開発へと発展しました。産総研の組織改革の影響で開発継続が危ぶまれる時期もありましたが、困難を乗り越えて開発は進み、2005年にはレーザー傷検査装置事業室を開設し、製品の販売を開始しました。

しかし、販売開始直後の2008年に発生したリーマン・ショックによる世界的な不況の影響を受け、検査装置は全く売れないという厳しい現実に直面します。さらに、シグマの本業である自動車部品製造の業績も大きく落ち込みました。この苦境の中、営業担当者が市場を調査する中で、製品化した検査装置よりもさらに小口径の穴に対する傷検査ニーズが高いことを発見します。この情報に基づき、再び研究開発に注力。改良を重ねた結果、2010年に正式に「穴ライザー」（ANALYZER）シリーズとして商品化されました。この「穴ライザー」が、自動車関連メーカーにとどまらず、様々な分野の部品メーカーから注文を受けるようになり、シグマは穴内面の傷検査装置という極めて専門的な市場において、疑う余地のないニッチトップメーカーとしての地位を確立するに至りました。

所在地・組織

シグマ株式会社は、広島県呉市の本社工場を拠点に、東広島市に黒瀬工場を構えています。セキュリティ事業については、広島県呉市に西日本事業所およびS-Labを、東京都新宿区に東京営業本部を置いています。また、グローバルな事業展開として、中国の丹陽市に希格瑪精密機械（江蘇）有限公司、インドのチェンナイ市にSIGMA FORGING ＆ FORMING PVT.,LTDという海外拠点を設けています。子会社としては、「ANALYZER」という社名の子会社も存在します。

創業から時代の変化に合わせて事業を多角化し、特に独自の技術力でニッチ市場を開拓・確立することで、シグマ株式会社は今日の地位を築いています。

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