シシュマール級潜水艦

シシュマール級潜水艦：インド海軍の通常動力型潜水艦

シシュマール級潜水艦は、インド海軍が運用する通常動力型潜水艦の艦級です。ドイツのホヴァルツヴェルケ＝ドイツ造船（HDW）が開発した209/1500型潜水艦をベースに、インド海軍の運用要求に応じたカスタマイズが施されています。

開発経緯

インド海軍は、1965年にソ連と協定を結びフォックストロット型潜水艦を導入し、1967年からカルヴァリ級として運用を開始しました。同時期に、原子力潜水艦の取得も視野に入れており、カルヴァリ級の後継艦計画では、通常動力型潜水艦の導入に留まらず、原潜の建造・運用に必要な人材育成も目的としていました。しかし、ソ連はフォックストロット型の改良型しか提案しなかったため、インドは西ドイツに目を向け、HDWの209/1500型潜水艦を採用しました。

1981年12月11日に契約が締結され、HDW社がキールで2隻を建造後、同社から供給されたブロックをマザゴン造船所で組み立てる方式が採用されました。しかし、1990年にHDW社による贈賄事件が発覚し、追加の2隻の建造は中止されました。国内建造された2隻も、溶接不良などの問題によりスケジュールが遅延し、コストもドイツ建造の約2倍に膨れ上がりました。

設計

本級の設計は、209型潜水艦を踏襲しており、単殻構造の耐圧殻の上に非耐圧の上部構造を配置しています。耐圧殻にはHY-80高張力鋼が使用され、最大潜航深度は260mです。209型シリーズでは唯一、セイル前方の構造内部に緊急脱出用の救命球を搭載しています。この救命球はIKL社製で、乗員全員を収容し、8時間分の酸素を供給可能です。

機関

機関方式はディーゼル・エレクトリック方式を採用しており、MTU 16V493 TY60（またはAZ80）ディーゼルエンジンを4基搭載しています。各エンジンには出力430kWの発電機が接続されており、その電力で出力6,100shp（定格4,600shp）の電動機1基を駆動します。発電機と電動機はシーメンス社製で、推進器は7翼式です。バッテリーは、ドイツ建造の2隻がファルタ社製132セル×4セット（総重量280トン）、インド建造の2隻がクロライド社製です。

特徴

大型化された蓄電池: 熱帯での運用を考慮し、他の209型潜水艦よりも大容量の蓄電池を搭載しています。
救難球の搭載: シリーズで唯一、非常時脱出用の救難球を搭載しています。

近代化改修

本級は近代化改修済みですが、AIP（非大気依存推進）システムの導入を含む、更なる近代化改修の計画も存在します。

同型艦

INSシシュマール (S44)
INSシャンシュマール (S45)
INSシャルキ (S46)
INSシャンクル (S47)

参考文献

海人社 編「世界の潜水艦」『世界の艦船』第637号、海人社、2005年1月。
小林正男「現代の潜水艦」『世界の艦船』第900号、海人社、2019年5月。
Gardiner, Robert (1996), Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995, Naval Institute Press.
Saunders, Stephen (2015), Jane's Fighting Ships 2015-2016, Janes Information Group.
* Wertheim, Eric (2013), The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.), Naval Institute Press.

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