シス規範

シス規範（シスきはん）、またはシスノーマティヴィティとは、社会に浸透している規範の一つで、全ての人々が本質的にシスジェンダーである、あるいはそうあるべきだという考え方を指します。この規範は、シスジェンダーが当然であるという前提に基づき、社会の様々な側面に影響を与えています。

シス規範の概要

シス規範は、人が生まれた際に割り当てられた性別が、その人の性自認（ジェンダー・アイデンティティ）と一致しているという考えを前提としています。つまり、出生時に男性とされた人は男性として、女性とされた人は女性として生きるべきだという暗黙の了解が存在します。しかし、実際には、性自認が出生時に割り当てられた性別と一致しない人々、例えばトランスジェンダーやノンバイナリーの人々が存在します。シス規範は、このような性別二元論から外れた人々の存在を認めず、抹消する可能性を孕んでいます。

シス規範の有害性

シス規範は、社会の様々な分野で有害な影響を及ぼします。例えば、医療の現場では、シスジェンダーを前提とした医療行為が行われることがあり、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々が適切な医療を受けられないという問題が生じます。また、シス規範は、教育、雇用、法律など、社会のあらゆる場面で差別や偏見を生み出す温床となります。

シス規範とジェンダー本質主義

シス規範は、ジェンダー本質主義と深く結びついています。ジェンダー本質主義とは、性別は生まれつきのものであり、不変であるという考え方です。この考え方は、性自認の多様性を認めず、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々を排除する根拠となります。

シス規範は、シスジェンダリズムというイデオロギーを支える基盤となっています。シスジェンダリズムとは、出生時に割り当てられた性別と一致しない性同一性の存在、およびそれに関する表現やコミュニティを否定、軽蔑、または病理化する文化的および体系的なイデオロギーです。

シス規範を克服し、多様な性のあり方を尊重する社会を築くためには、シスジェンダー自身がシス規範の問題点に気づき、意識を変えていく必要があります。また、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々の経験や視点に耳を傾け、共に社会を作り上げていくことが重要です。

関連用語

トランスフォビア：トランスジェンダーの人々に対する嫌悪や偏見。
ノンバイナリーの人々に対する差別：性自認が男性・女性のいずれにも当てはまらない人々に対する差別。

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