シタデル (ケベック)

ケベック・シタデル：歴史と軍事の要衝

ケベック・シティの象徴的な存在であるシタデルは、ディアマン岬の上に位置する、北米最大規模の現役要塞です。その歴史は17世紀にまで遡り、フランス統治時代からイギリス統治時代、そして現代へと、様々な歴史的変遷を経てきました。現在では、カナダ軍王立第22連隊が駐屯する軍事施設であるとともに、カナダ国王と総督の第二公邸としても重要な役割を担っています。

歴史

シタデルの起源は、17世紀にフランスのフロンテナック伯爵ルイ・ドゥ・ブアドによって築かれた城塞にあります。フランス軍事技術者ジャック・ルヴァッサー・ドゥ・ネーレによって設計されたこの城塞は、ルイ14世の諮問技術将校セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバンによって1701年に承認されました。1745年のルイブール要塞陥落後、本格的な建築が開始され、1750年に建てられた火薬庫や、1693年に築かれたディアマン岬要塞など、フランス統治時代の遺構が今も残されています。

現在の星形要塞は、1820年から1831年にかけてイギリス軍によって建設されました。新古典主義建築様式であり、ヴォーバンの築城法の影響を強く受けた防御重視の構造となっています。この要塞の建設は、ディアマン岬という戦略的要地をアメリカ軍から守る目的と同時に、民衆蜂起の際にはイギリス軍の拠点としての役割も担うことを意図していました。４つの稜堡がケベック市街とエイブラハム平原に向けて配置され、その外壁が都市を守っています。

シタデルが今日までほぼ完璧な状態で保存されているのは、1872年から1878年にかけてカナダ総督を務めた初代ダファリン＝エヴァ侯爵フレデリック・ハミルトン＝テンプル＝ブラックウッドの尽力によるものです。彼はシタデル内に第二の公邸を設け、その重要性を強調しました。

また、シタデルは、第二次世界大戦中に重要な会議の舞台となりました。1943年のケベック会談と1944年の第2回ケベック会談では、イギリス、アメリカ合衆国、カナダの首脳がこの地で戦略を協議しました。

現在のシタデル

1920年以降、シタデルにはカナダ軍王立第22連隊が駐屯しています。軍事基地としての機能に加え、カナダ国王と総督の第二公邸としての役割も担っており、総督は伝統的に数週間滞在します。現在、総督の主要な公邸はオタワのリドー・ホールです。夏季には、毎日、衛兵交代式がフランス語で行われ、多くの観光客がその様子を見学に訪れます。

シタデルは現役の軍事施設であるため、個人での見学は許可されていません。しかし、ガイド付きツアーに参加することで、その歴史や建造物を詳しく学ぶことができます。

王立第22連隊博物館

シタデル内にある王立第22連隊博物館は、かつて刑務所であった場所を再利用したものです。この博物館では、第22連隊の制服や第一次世界大戦の記録、平和維持活動に関する展示品を見ることができます。また、連隊が授与された数々の勲章、ビクトリア十字勲章などの貴重な品々も展示されています。加えて、フランス統治時代に作られた火薬庫や、当時の様子を再現した模型、歴史上の人物の像も展示されており、シタデルの歴史をより深く理解するための重要な施設となっています。

博物館には、絵画、武器、そしてシタデルでの軍隊生活が書き残された珍しい手書きのメモも展示されています。現在博物館事務所として利用されている場所は、かつて要塞内の桶屋があった場所です。

シタデルは、その歴史的、軍事的、そして文化的価値から、世界遺産であるケベック歴史地区の一部として登録されており、カナダの歴史と文化を伝える上で欠かせない場所です。訪れる際には、その歴史的背景と軍事的な重要性を意識し、ガイドツアーを通して、より深くその魅力を感じてみてください。

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