シチョウ

囲碁の手筋「シチョウ」とは

シチョウ（四丁・征とも書く）とは、囲碁における基本的な手筋の一つです。アタリを連続させることで、相手の石を盤の端まで追い詰め、最終的に取ってしまうテクニックを指します。一見すると逃げ続けることができるように見えますが、盤の端に到達すると逃げ場がなくなり、石を取られてしまいます。このため、「シチョウ知らずに碁を打つな」という格言があるほど、囲碁において重要な手筋です。

シチョウの基本

左図のような局面で、△の白石を取る基本形が右図の黒1です。この手を「シチョウに抱える」と言います。白2と逃げ出した場合、黒3と進路を塞ぐようにアテるのがポイントです。反対側からアテてしまうと、白石は逃げ出すことができてしまいます。

この後、白が逃げようとしても、黒は符号順に追いかけることで盤端に追い詰めることができ、白石を取ることができます。

シチョウアタリ

シチョウを仕掛けた際、白が逃げる先に別の白石（△）がある場合があります。この状態を「シチョウアタリ」といいます。この場合、黒が単純に追いかけると、白はシチョウアタリの石と繋がってしまい、黒はアタリをかけられなくなります。そうなると、黒は逆に両アタリの弱点を抱えてしまい、形勢を大きく損ねてしまう可能性があります。

したがって、シチョウが発生しそうな場合は、シチョウアタリの有無を慎重に見極める必要があります。シチョウアタリがない場合は、盤端に追い詰めることで石を取ることができます。

シチョウと定石

シチョウの有利不利は、定石選択にも大きく影響します。例えば、小目一間高ガカリ定石の一例として、右上隅に白石があり、シチョウが白有利の場合、白は1に曲がる手が成立します。黒が2と応じても、白は3とハネ、黒が4と抱えても逃げ出すことができます。このため、黒は2の時点でaに伸びるなど別の手段を講じる必要があります。

逆に、白がシチョウ不利な場合は、白1と打って黒に2子を取らせるしかなく、やや不利な形に甘んじなければなりません。

特殊なシチョウ

シチョウは必ずしも階段状になるとは限りません。例えば、下図aに黒が打つことで、白2子を取ることができます。また、シボリやマクリといったテクニックを駆使して石を取るシチョウは「グルグルマワシ」とも呼ばれます。

シチョウに関するエピソード

2000年の本因坊戦挑戦手合第1局では、挑戦者の王銘琬がシチョウを見落とし、中央の石をただで取られるという失態を演じました。この対局はわずか59手で終局し、タイトル戦史上最短手数となりました。しかし、その後王は盛り返し、本因坊を奪取しました。

珍瓏

珍瓏（ちんろう）とは、指定された局面からシチョウの手筋を用いて指定された石を取る詰碁の問題です。初形や最終図に文字や形を描いた作品も発表されており、特に棋士の中山典之六段が発表した、最終形がハートの形になる問題がよく知られています。

参考文献

• - 『シチョウの世界』（中山典之著・日本棋院） ISBN 4-8182-0434-X

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