シチリアーナ

シチリアーナ (Siciliana) とは

シチリアーナは、ルネサンス音楽末期から初期バロック音楽にかけて成立した舞曲の一つです。その名前は、イタリア語で「シチリアの」を意味する形容詞に由来します。

特徴

シチリアーナは、一般的に以下のような特徴を持ちます。

拍子: 8分の6拍子または8分の12拍子
テンポ: 緩やか
リズム: 付点リズムを多用
旋律: たゆたうような、物憂げな雰囲気
調性: 短調（または自然短音階）

これらの要素が組み合わさることで、シチリアーナは独特の憂愁を帯びた美しい旋律を奏でます。

歴史

シチリアーナは、器楽曲の楽章としてだけでなく、オペラのアリアなどにも用いられました。バロック時代には、多くの作曲家がシチリアーナを作曲しています。

作者不詳 (16世紀):《リュートのための古風な舞曲とアリア》第3組曲 (レスピーギ編)
20世紀にレスピーギが弦楽合奏用に編曲したものが有名。カゴメのCMに使用され、話題を呼びました。
ヘンデル: 《リコーダーソナタ ヘ長調》HWV369 第3楽章
J.S.バッハ (伝): 《フルートソナタ 変ホ長調》BWV1031 第2楽章
バッハ自身も、カンタータなどに多くのシチリアーナを作曲しています。

古典派の時代にも、シチリアーナのリズムは愛用されました。

モーツァルト: 《ピアノソナタ第11番》
モーツァルト: 《ピアノ協奏曲第23番》
ハイドン: オラトリオ《天地創造》
チマローザ: 《オーボエ協奏曲》

19世紀には、シチリアーナの作曲は一時下火になりますが、世紀末にフォーレが《シシリエンヌ ト短調》を作曲し、再び注目を集めました。この曲は、後にケックランによってオーケストラ編曲され、劇付随音楽《ペレアスとメリザンド》に使用され、広く知られるようになりました。

用語

シチリアーナは、イタリア語の女性名詞 (siciliana) ですが、男性名詞のシチリアーノ (siciliano) や、フランス語の女性名詞シシリエンヌ (Sicilienne) も用いられます。

シチリアーナは、その緩やかなテンポと美しい旋律で、聴く人の心を捉える魅力的な舞曲です。

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