シチリアーノ 裏切りの美学

シチリアーノ 裏切りの美学

『シチリアーノ 裏切りの美学』、英題『Il traditore』は、2019年に公開されたイタリアの犯罪映画で、監督はマルコ・ベロッキオ。その内容は、実際に存在した大物マフィアトンマーゾ・ブシェッタの生涯に焦点を当てており、彼の組織への裏切りと司法への協力を通して、マフィアの危険で複雑な世界を描写しています。主演にはピエルフランチェスコ・ファヴィーノがブシェッタを演じ、他にも多彩なキャスト陣がそろっています。

あらすじ

物語は1980年9月4日、シチリアにおける麻薬取引の中心地で展開されます。この日、コーサ・ノストラの二大組織、パレルモとコルレオーネのメンバーが集結し、緊張感が漂う中、ブシェッタは差し迫った抗争の危険を感じ、家族を連れてブラジルへ移住しようと決意します。しかし、マフィア内での抗争は深刻化し、仲間やその家族が次々と命を落としていく状況が彼を待ち受けています。

南米にいる間、ブシェッタは警察に拘束され、身体的・精神的な拷問を受けます。彼は司法への引渡しを恐れ、ストリキニーネによる自殺を試みますが、一命を取り留めたことで、故郷での司法に協力する道を選ぶことになるのです。

コーサ・ノストラの掟を破ることは命の危険を伴う裏切りですが、ブシェッタは司法への証言を開始します。彼の協力により、イタリアの司法機関はマフィアの実態に迫ることに成功し、1986年には歴史的なマフィア大裁判が開かれます。ブシェッタは最重要証人として証言を行いますが、彼の証言は矛盾を指摘されるなどして厳しい状況に直面します。

召喚されたのはブシェッタだけでなく、彼の友人であるサルヴァトーレ・コントルノも協力者として名乗り出ます。コントルノは言葉の壁を克服しながらブシェッタと共にマフィアの全貌を暴く手助けをします。時が経つにつれて、反マフィア運動は強まり、ブシェッタはその証言によって、組織への攻撃を引き起こすことに寄与します。

裁判と復讐

この裁判で、ブシェッタは過去に失踪した息子たちが最も愛する者たちによって殺害されたことを知ります。この知らせは彼にとって衝撃であり、息子たちを守れなかったことへの後悔の念が募ります。また、1992年にはファルコーネ判事が暗殺され、これを受けてブシェッタは政治とマフィアの関係を暴露する決意をし、自身が持つ重要な情報を司法に提供します。

こうして物語はクライマックスを迎え、ブシェッタの証言は「世紀の裁判」を引き起こし、彼自身が証人としての立場から政治の重要人物とマフィアの繋がりについて語ります。これにより、圧倒的な力を持つマフィアの一部が拘束され、組織は崩壊の一途を辿ります。

その後の人生

晩年のブシェッタは、米国で新たな生活を送りながらも、失われた家族への罪悪感に苛まれ続けます。彼はマフィアとしての過去を振り返りつつ、時折夢の中で標的だった人物の存在を思い起こすことがありました。1992年、彼は再び故郷に帰国することを決意しますが、その時には多くの血にまみれた過去が彼を待ち受けていました。最後には、新たな家族との生活を送りながらも、彼の一生は忘れられない痛みを伴ったものでした。

受賞歴

『シチリアーノ 裏切りの美学』は数々の映画祭で評価され、アカデミー賞の国際長編映画部門にイタリア代表として出品されました。また、カンヌ国際映画祭やヨーロッパ映画賞などでもノミネートされ、その影響力は決して少なくはありません。

この映画は、マフィアの裏切り者がどのようにして自らの運命を背負い、司法と対峙するかを描き出した力強い作品であり、観る者に深い感銘を与えます。

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