ストリキニーネ

ストリキニーネについて



ストリキニーネ(strychnine)は、インドールアルカロイドの一種であり、非常に強い性を持つ化合物です。この物質は「ストリキニジン-10-オン」としても知られ、1948年にはロバート・バーンズ・ウッドワードによってその化学構造が解明され、1954年には彼によって全合成が成功しました。さらに、1956年にはX線結晶構造解析によりストリキニーネの絶対配置が明らかになりました。

物理的特性



ストリキニーネは無色の柱状結晶として存在し、熱湯に容易に溶け、アルコールやクロロホルムにも少量溶解する特性があります。加えて、強烈な苦味があり、1ppmでも苦味を感じることができるほどです。実際には「ストリキニーネ硝酸塩」として流通することが多く、1819年にマチン(Strychnos nux-vomica)の種子から発見され、その名称もこの学名に由来しています。日本のキニーネとは異なる化合物であり、誤認することは避けるべきです。ストリキニーネは自然界では、トリプトファンから合成されることが知られています。

同じくマチンから得られるブルシンはストリキニーネに似た化学構造を持ちますが、メトキシ基を有しているため、性はストリキニーネよりも弱いです。

用途と規制



医療分野では、ストリキニーネは苦味健胃薬、痙攣を引き起こす薬、または強精剤として利用されることがあります。ただし、この化合物は体内に蓄積される特性があるため、使用には注意が必要です。分析や研究においても、リン酸塩や亜硝酸塩、硝酸塩などの検出、およびさまざまな金属の分析に用いられることがあります。

また、ストリキニーネは殺鼠剤としても使用されており、日本では物及び劇物取締法において規制されています。特に1993年に埼玉で発生した愛犬家連続殺人事件での使用が記憶に新しいです。

症状



ストリキニーネは脊椎動物に対して強力な中作用を持っており、脊髄グリシンレセプターに作用して神経伝達を阻害します。これにより、痙攣を引き起こし、強直性の痙攣や体が弓なりに反り返る後弓反張などの症状が現れます。痙攣は、無意識の状態で発生し、激しい筋肉の痛みと共に、恐怖感を伴うのが特徴です。

致死量は個人差がありますが、成人の場合は30mgから120mgと言われており、時には3.75gの摂取で生存したケースもあります。中の治療では、鎮静剤や筋弛緩剤が投与され、痙攣の防止と呼吸器の管理が行われます。

文化におけるストリキニーネ



ストリキニーネは文学や映画においてしばしば描かれ、特に殺人事件の題材で使用されることが多いです。例えば『スタイルズ荘の怪事件』や『八つ墓村』などでは、物語の中でこの物質が用いられています。更に、1960年代には若者の間で、興奮剤として使用されることもあり、その代表例として「ザ・ソニックス」の曲「ストリキニーネ」が挙げられます。また、オリンピックに関連してもドーピングに用いられた歴史があります。

新しい手法によるストリキニーネの全合成も科学者たちの関心の的となっており、1954年以降多くの合成方法が提案されています。特にウッドワードの合成法は非常に複雑であると評価されています。

ストリキニーネは、ハイリスクな物質であると同時に、科学的な興味を引きつける存在でもあります。その理解と取り扱いには専門家の知識が不可欠です。

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