シティ・オブ・コーパスクリスティ (原子力潜水艦)

USS シティ・オブ・コーパスクリスティ (SSN-705)

アメリカ海軍に所属したロサンゼルス級原子力潜水艦の18番艦として、USS シティ・オブ・コーパスクリスティ、艦番号SSN-705は建造されました。この艦は、アメリカ合衆国テキサス州の都市であるコーパスクリスティ市にその名を由来しています。過去にはタコマ級フリゲートの42番艦（PF-44）も同市にちなんで命名されており、本艦は歴史上2隻目のコーパスクリスティを冠するアメリカ海軍艦艇となりました。しかし、その命名において特筆すべき点があります。それは、本艦が「シティ・オブ」という接頭辞を唯一付与された艦であるという事実です。

この珍しい命名形式が採用された背景には、艦名に選ばれた「コーパスクリスティ」という言葉が、ラテン語で「キリストの体」を意味するという宗教的な由来を持つことにありました。この名称が軍艦の名として適切ではないと考える人々からの懸念や抗議が存在したため、その配慮として、直接的な地名ではなく「コーパスクリスティ市」という形を示す「シティ・オブ」が冠されることになったのです。これは、艦名選定における社会的な配慮を示す一例として記録されています。

USS シティ・オブ・コーパスクリスティの建造は、1973年10月31日、コネチカット州グロトンに拠点を置くジェネラル・ダイナミクス社のエレクトリック・ボート部門に正式に発注されました。それから時を経て、1979年9月4日にその船体が起工されます。進水式は1981年4月25日に行われ、この重要な儀式では、当時上院軍事委員長を務め、後にはジョージ・H・W・ブッシュ政権下で国防長官候補にも名前が挙がったジョン・タワー上院議員の夫人、ライラ・タワー夫人が命名者として名を連ねました。船体が完成し、全ての準備が整った後、本艦は1983年1月8日に正式にアメリカ海軍に就役します。初代の艦長としては、W・G・「ジェリー」エリス氏がその指揮を執りました。

艦のシンボルとも言えるパッチのデザインは、命名の由来となったコーパスクリスティ市の市議会が主催したデザインコンテストへの応募作品の中から、乗組員たちの手によって選ばれました。これにより、艦と命名地との間に特別な繋がりが生まれました。

就役から長きにわたり、アメリカ海軍の原子力潜水艦部隊の一員として様々な任務に従事したUSS シティ・オブ・コーパスクリスティは、その役目を終える時を迎えます。2016年5月30日、本艦は正式に退役し、その30年以上にわたる艦歴に幕を閉じました。

USS シティ・オブ・コーパスクリスティ（SSN-705）の歴史は、特徴的な命名の背景から建造、就役、そして退役に至るまで、アメリカ海軍の近代潜水艦史の一ページを飾るものです。特に、「シティ・オブ」という接頭辞が示す命名への配慮は、文化的な視点からも興味深い事例と言えるでしょう。

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