シティ・ホール駅 (IRTレキシントン・アベニュー線)

ニューヨーク市地下鉄シティ・ホール駅：華麗なる廃駅の歴史

ニューヨーク市地下鉄IRTレキシントン・アベニュー線には、シティ・ホール駅という忘れられた駅が存在します。1904年10月27日、マンハッタン本線の南側終着駅として開業したこの駅は、ニューヨーク市庁舎地下という一等地に位置し、当時としては革新的なデザインを誇っていました。

開業から閉鎖までの道のり

設計を手掛けたのは、建築家ラファエル・グアスタビノ。駅舎は、ニューヨーク市地下鉄において珍しいロマネスク・リヴァイヴァル様式で、天窓や色付きガラス、真鍮製のシャンデリアなど、豪華な装飾が施されていました。開業当時、15,000人を超える人々が詰めかけ、盛況のうちに幕を開けました。

しかし、この美しい駅は、開業からわずか40年でその役目を終えることになります。その理由は、駅の構造にありました。ホームがカーブ上にあり、5両編成の列車しか入線できなかったのです。乗客数の増加に伴い、より長い編成の列車が必要となりましたが、ホームの延長は構造上の制約から困難でした。さらに、当時導入が進められていた新型車両は中央にもドアがあり、ホームとの間に大きな隙間ができて危険であったため、可動式ギャップフィラーの導入も困難でした。

結果として、シティ・ホール駅は1945年12月31日に閉鎖されました。北隣に位置するブルックリン・ブリッジ-シティ・ホール駅の方がアクセスが良く、利用客が多かったことも閉鎖の決定に影響を与えたと考えられます。閉鎖当時、1日の利用客はわずか600人でした。

閉鎖後、そして現在

閉鎖後も、シティ・ホール駅は完全に忘れ去られたわけではありませんでした。1995年には、ニューヨーク交通博物館の別館として公開する計画もありましたが、アメリカ大使館爆破事件を受け、安全保障上の理由から断念されました。

現在では、一部のツアーで駅舎内部を見学することができるようになっていますが、予約が必要で、条件が厳しく設定されています。また、ブルックリン・ブリッジ-シティ・ホール駅を終点とする6系統と<6>系統の列車に乗車すると、ホームの一部を車両から眺めることができます。これらの列車はシティ・ホール駅で折り返し運転を行っており、その際、車掌による案内放送が流れます。

駅構造と文化的影響

シティ・ホール駅は、単式ホーム1面1線の構造で、ラケット型のループ線を持っていました。この独特の構造が、ホームの延長を困難にした一因でもあります。

駅舎の美しさは、高い評価を受けており、2009年には旅行雑誌『Travel + Leisure』が選ぶ「世界で最も美しい地下鉄駅」ランキングで12位に選ばれました。また、2016年公開の映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では、クライマックスシーンの舞台として登場しています。

シティ・ホール駅は、豪華な装飾と短い歴史、そして現在も残る謎めいた雰囲気を持つ、忘れられない地下鉄駅として、人々の記憶に刻まれています。その美しい姿は、今もなお、地下に眠り続けています。

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