シトロエン・ヴィザ

シトロエン・ヴィザ

シトロエン・ヴィザは、1980年代のフランスにおいて自動車をありふれたものにすることを目指して開発された小型自動車です。このモデルは1978年から1988年までの期間、シトロエンの主力商品として位置づけられ、ディアーヌやアミといった旧モデルに代わる存在として多くの人々に親しまれました。

開発の背景

1974年にシトロエンがプジョーの傘下となり、PSA・プジョーシトロエンとして新たなスタートを切りました。その中で最初に投入されたモデルがヴィザでした。前身のLNと同様にプジョー・104の機構を基にしており、シトロエンらしい独創的なデザインを取り入れています。特に、特徴的なフロントグリルやダッシュボードのサテライトスイッチは、シトロエンの個性を感じさせるポイントです。

モデルラインナップ

1978年の登場時、ヴィザは主に3つのバリエーションで販売されました。伝統の空冷水平対向エンジンを搭載した「スペシャル」と「クラブ」、そしてプジョー製の水冷1,124ccエンジンを搭載する「シュペール」がありました。水冷モデルは古い空冷エンジンと比べ、静粛性やパワーが大幅に改善され、より快適なドライブが可能となりました。このように、数世代にわたるエンジンの改良や新しいバリエーションの追加により、ヴィザは車両ラインアップの中心に立ちました。

1984年にはディーゼルエンジンを搭載したモデルも仲間入りし、様々なニーズに応えるラインナップが揃いました。1982年にはマイナーチェンジが行われ、従来の特徴的な外観が改良され、より一般的なデザインへとシフトしました。

乗り心地と性能

ヴィザのサスペンションは、長いストロークを特徴としており、良好な乗り心地を提供しました。特にコーナリング時のロール感は独特で、安定した直進性を誇っていました。高い空力特性が功を奏し、高速道路での走行も快適でしたが、車両の防錆対策不足や内装の質感の低さなど、いくつかの欠点も存在しました。

高性能モデルの導入

ヴィザは、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIの影響を受けて高性能モデルも取り入れるようになりました。1,400ccの80馬力の「GT」や、ツインキャブ仕様で93馬力を発生する「クロノ」、さらにはラリー仕様の「ミルピスト」などが追加され、高性能版としての魅力が拡大しました。ただ、これらのモデルは商業的な成功を遂げることは難しく、同時期に人気を集めたプジョー・205 GTIに対抗することはできませんでした。

派生モデル

ヴィザから派生したモデルも存在します。1984年には、ヴィザをベースにした商用車「シトロエン・C15」が登場しました。C15は570kgの積載能力を持つフルゴネット型で、技術的な改良が施されており、商業的にも成功を収めました。また、ルーマニアで生産された「シトロエン・オルトシト」は、ヴィザに似た外観を持ちながら、異なる技術基盤を持っています。

生産の終了

1988年、シトロエンはヴィザの生産を終了し、新モデルのシトロエン・AXへとバトンタッチしました。38年の歴史の中で、多くの人々に愛されたヴィザは、シトロエンブランドの一部として今も記憶に残り続けています。

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