シド・フィンチ

シド・フィンチ：エイプリル・フールの神話

シド・フィンチ（Sidd Finch）は、1985年4月1日号の『スポーツ・イラストレイテッド』で紹介され、その後大きな話題となった架空の投手です。この奇妙なキャラクターは、驚異的な投球速度と特異な経歴を持っていますが、実際には存在しない人物です。この魅力的なストーリーは、当時の読者を惹きつけ、多くの人々が信じ込む結果となりました。

期待の新人投手

フィンチは、ニューヨーク・メッツに入団したという設定で登場します。彼は、時速168マイルという驚異的な速球を投げる才能を持ち、その制球力もとても高いとされました。この速さは、当時のメジャーリーグの記録を大きく上回るものであり、誰もがその実在を信じたくなる理由の一つでした。

また、フィンチのユニークな姿勢にも注目が集まりました。片足にはハイキング・ブーツ、もう一方は裸足というスタイルで投球するという奇抜なキャラクター設定が、読者の想像力を掻き立てました。彼のバックグラウンドも非常に特異であり、イギリスの孤児院で育ち、その後ネパールで生活をするという神秘的な経歴の持ち主として描かれました。

編纂の経緯

このフィクションは、当時の『スポーツ・イラストレイテッド』誌の編集長マーク・マルヴォイが、1985年4月1日のエイプリル・フールにちなんで企画したものでした。常連寄稿者のジョージ・プリンプトンに依頼し、彼はフィンチに関するユニークな記事を書き上げました。しかし、実在の話題に乏しいため、プリンプトンは自由に創作を行うことを許可された結果、フィンチの滑稽で魅力的なストーリーが誕生したのです。

その記事には、フィンチがチベットでヨガを学んだ成果だとも説明されており、ヨガの教えが彼の驚異的な投球力を生み出したとされました。これにより、フィンチはただの投手ではなく、深い哲学的背景を持ったキャラクターとしても評価されることになったのです。

読者の反応

記事の掲載斜めると、当時のメッツのファンはこの新たな才能に狂喜し、『スポーツ・イラストレイテッド』に続報を求める声が殺到しました。メディアもこの話題に飛びつき、「シド・フィンチ」と名乗るこの新人が実在するのか、その実力はいかにかを追い求めました。メッツの広報担当者は、スポーツ・イラストレイテッドだけに情報を流すことに対し疑問を呈する声も上がりました。

嘘の正体

その後、フィンチの存在が虚構であることが明らかになると、多くの人々は驚きました。4月2日に行われた記者会見には、フィンチ役を演じたジョー・バートンが姿を現し、実在しないキャラクターであることを公にしました。記事の中の見出しには、フィンチが実在しないことを示唆する隠れたメッセージがあり、エイプリル・フールのジョークとして巧妙な仕掛けが施されていたことに気付かされた人も多かったのです。

最後に、4月の号ではフィンチの活動が終了したことが小さく報じられ、続く号では全てがフィクションであったことが公式に発表されました。シド・フィンチは、その名を知られることとなり、エイプリル・フールの象徴的な存在として記憶されることとなったのです。

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