シネマデプト友楽

シネマデプト友楽の歴史と概要

シネマデプト友楽（シネマデプトゆうらく）は、1990年から2010年まで奈良県奈良市に存在した映画館です。この映画館は、三条通りに位置し、本館とEASTの2つの建物から構成されていました。運営は地元の興行会社である谷井興業株式会社が行っており、その後、社名を株式会社友楽に改称しました。本稿では、シネマデプト友楽及びその前身にあたる映画館についての詳細を説明します。

開館からの歴史

シネマデプト友楽の本館は、1990年に開館しました。それまで運営されていた4つの劇場が解体され、新しく5スクリーンのシネマコンプレックスとして設計されたものでした。当時はシネマコンプレックスという言葉が広まっていなかったため、映画のデパートという意味を込め「シネマデプト」という名前がつけられました。

開館の際には、奈良県知事や市長が出席し、多くの注目を集めました。テレビやレンタルビデオの普及で映画館が厳しい状況に置かれていましたが、観客を呼び戻すために施設の近代化に努め、経費を3割カットする一方で売上は4割も伸びました。このことから、劇場の設備を充実させることが観客増加に寄与すると考えられました。

増館と作品活動

1996年には、映画のラインアップに対応できなくなったため、EASTという新しい館を開設しました。EASTでは3スクリーンが設けられ、隣接のゲームセンターと一体のアミューズメント施設としても楽しむことができました。社長の谷井勇夫は、奈良出身の映画監督河瀬直美との親交が深く、彼が主宰する映像制作集団「組画」がシネマデプト友楽でミニシアター系作品を上映する活動も行っていました。代表的な作品には、河瀬監督の『萌の朱雀』や『Focus』などがありました。

リニューアルと運営の苦境

2005年には、本館がデザイナーズシネコンとしてリニューアルされ、バリアフリーにも配慮したスタイリッシュな施設に生まれ変わりました。この改装は、多くの客に支持され、各種映画館ランキングでも評価されることとなりました。しかし、2000年代以降、郊外に競合となる映画館が増えたことや、同社社長が胃がんを患うなどの事情により、徐々に動員数が減少し続けました。

2010年1月31日にシネマデプト友楽は閉館を迎えました。閉館に際しては、『ローマの休日』などの名作が上映され、過去の上映作品のポスターも無料で配布されるなど、感謝の意を表する取り組みが行われました。奈良市は、この閉館により都道府県庁所在地で唯一映画館がない状況に陥ったのです。閉館後、同館の映写設備は、河瀬が理事長を務めるなら国際映画祭実行委員会に寄贈されました。

前身となる劇場

シネマデプト友楽には、いくつかの前身となる劇場がありました。最も古いのは奈良ニュース映画館で、1942年に開館しました。この劇場は当初ニュース映画を中心に興行し、その後洋画の上映も行うようになりましたが、1989年に閉館しました。

友楽座と友楽スカラ座は、映画上映を中心に行った劇場でしたが、友楽スカラ座は1970年に開館し、その後成人映画の上映を行っていました。最終的には、友楽会館という大劇場が1954年に建設され、映画だけでなく舞台上演も可能でしたが、老朽化のため1990年に閉館しました。

シネマデプト友楽の設備

シネマデプト友楽本館は、鉄筋コンクリート製の5階建てで、当時のシネマコンプレックスとして最新の設備が整っていました。映写機は全自動のイタリア製シネメカニカ社のもので、音響設備はJBL製の埋め込み式スピーカーを使用していました。2005年のリニューアルでは、現代的なデザインを取り入れた格子状の外観が特徴の新しい施設に生まれ変わりました。EASTも同様に3スクリーンが配置され、快適な視聴体験を提供していました。

シネマデプト友楽は、そのユニークな歴史と多彩な映画上映によって多くの観客に愛され、奈良市の映画文化の重要な一部であり続けた劇場でした。

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