シバ属

シバ属（Zoysia）について

シバ属は、イネ科に分類される多年草の一群です。これらの植物は、地面を這うように伸びる匍匐茎を持ち、節ごとに直立する茎を出して葉をつけます。硬めの草質で、その丈夫さから芝生として利用されることが多いのが特徴です。

シバ属の特徴

形態: 小型で多年生の草本。茎は地面を這い、節ごとに花茎を直立させます。葉は線形で先端が尖り、長くは伸びません。
花序: 狭い総状花序で、円柱状で小さいのが特徴です。
小穂: 柄を持ち、1つの小花のみを含みます。左右から扁平で、第1包頴は退化しているか、小型で膜質です。第2包頴は卵形から長楕円形で、革質で光沢があり、小穂を覆います。護頴は小型で膜質、内頴は発達しないか、短いものを持つことがあります。
学名: オーストリアの植物学者 Karl von Zois にちなんで名付けられました。
和名: 標準和名をシバとする種に基づき、細葉や繁葉から名付けられたとされます。ギョウギシバやハイシバなど、他の地表を這うイネ科植物も「シバ」と呼ばれることがあります。

シバ属の種と分布

シバ属は、アフリカから東アジア、オーストラリアにかけて約10種が存在します。日本には以下の種が知られています。

Zoysia japonica: シバ（ノシバ）。日本、朝鮮、中国に分布。
Zoysia macranrha: オーストラリアに分布。
Zoysia macrostachya: オニシバ。日本、朝鮮、中国東部に分布。
Zoysia matrella: コウシュンシバ（高麗芝）。日本から東南アジア、マダガスカル、インドネシア、ニューギニア、ソロモン諸島と広い範囲に分布。
Zoysia pacifica: コウライシバ（キヌシバ）。朝鮮半島南部から日本、マリアナ諸島、モルッカ、ソロモン諸島に分布。
その他、ニュージーランド、ベトナムに分布する種も存在します。

分類

イネ科は大きくBOPクレードとPACMADクレードに分けられ、シバ属はPACMADクレードのヒゲシバ亜科シバ連に属します。シバ連はシバ亜連とネズミノオ亜連に分けられ、シバ属はシバ亜連に含まれます。

シバ属の利用

シバ属の植物は、主に芝生として利用されます。東洋では古くから利用されており、新羅時代には墳墓をシバで覆っていたという記録があります。西洋でも1800年代から利用が始まり、現在では南北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアで広く用いられています。

芝生用としては、シバ、コウライシバ、コウシュンシバが主に使用され、これらの雑種も利用されています。シバ属の芝生は、他の芝生用植物よりも水分や肥料の要求量が少なく、手入れが容易で、雑草に対する競争力も高いのが特徴です。

シバの名を持つ植物

シバという名前は、シバ属以外のイネ科植物にも広く使われています。

マツバシバ属（Aristida）
トダシバ属（Arundinella）
オヒゲシバ属（Chloris）
ギョウギシバ属（Cynodon）
メヒシバ属（Digitaria）
オヒシバ属（Eleusine）
シバムギ属（Elymus）
チカラシバ属（Pennisetum）
ウキシバ属（Pseudoraphis）
ネズミノオ属（Sporobolus）

また、カヤツリグサ科やマメ科にもシバの名を持つ植物が存在します。

参考文献

大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』、(2016)、平凡社
牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
その他参考文献参照

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