シャッター (カメラ)

シャッターとは

シャッターとは、カメラにおいて、写真フィルムや撮像素子などの感光面に、撮影時のみ光を当てるための装置です。露光時間中のみ開き、それ以外の時は光を遮断します。カメラ以外にも、映写機、ビデオプロジェクター、コピー機など、光を利用する様々な機器に同様の構造が用いられています。

シャッターの歴史

初期の写真撮影では、感光材料の感度が低かったため、長時間露光が必須でした。そのため、当初はシャッターはなく、レンズキャップを手動で脱着することで露光時間を調整していました。1845年頃、レンズの前で木板を落下させる最初のシャッターが発明され、その後、金属板を用いたシーソー型のシャッターが登場しました。感光材料の進歩に伴い、正確な露光時間が必要になると、ガバナーによる計時機構が組み込まれたシャッターが開発されました。

シャッターの基本的な動作は、「チャージ（エネルギーを溜める）」「レリーズ（シャッターを開放する）」「露光」「閉じる」という一連の流れです。しかし、ユーザーはこれらの複雑なメカニズムを意識することはほとんどなく、一般的には「シャッターボタン」を押すという行為が「シャッターを切る」と認識されています。

シャッターの種類

シャッターは、その位置によって大きく2種類に分類されます。焦点面（フォーカルプレーン）の直前に配置される「フォーカルプレーンシャッター」と、レンズ系の直前または途中に配置される「レンズシャッター」です。

フォーカルプレーンシャッター

フォーカルプレーンシャッターは、焦点面のすぐ近くに位置し、主に小型でレンズ交換式のカメラに採用されています。初期のライカでは横走り式でしたが、その後、縦走り式が主流となりました。高速シャッターが得意で、動きの速い被写体を捉えるのに適しています。

レンズシャッター

レンズシャッターは、レンズの近くに配置され、1枚または複数枚の羽根を円形に組み合わせた構造が一般的です。羽根の形状から「リーフシャッター」とも呼ばれます。主に大判カメラや中判カメラ、コンパクトカメラなどに採用されています。レンズシャッターは、フォーカルプレーンシャッターに比べて小型で振動が少ないという利点があります。また、ストロボ同調速度に制限がないため、フラッシュ撮影にも有利です。

レンズシャッターには、レンズの外側に配置される「フロントシャッター」、レンズのフィルム側に配置される「ビハインドシャッター」、レンズの中間に配置される「セントラルシャッター」があります。また、絞り羽根とシャッター羽根を兼用するタイプもあります。

シャッターの制御方式

シャッター速度の制御方式は、機械制御式と電子制御式に分けられます。

機械制御式

機械制御式は、ガバナーやスプリングなどの機械的な機構によってシャッター速度を制御します。電源が不要で、寒冷地でも安定して動作しますが、電子式に比べて精度は劣ります。

電子制御式

電子制御式は、マイクロコンピュータや水晶振動子などを用いてシャッター速度を制御します。自動露出機構との連動が可能で、高い精度のシャッター速度が得られますが、電源が必要です。

ハイブリッド式

ハイブリッド式は、機械制御式と電子制御式の機構を組み合わせたものです。高速シャッターは機械式で、低速シャッターは電子式で制御するなど、それぞれの利点を活かした方式です。

電子シャッター

デジタルカメラでは、機械的な機構を持たない、いわゆる「電子シャッター」も使用されています。これは、撮像素子と電子回路のみでシャッターの役割を果たす方式で、ローリングシャッターとグローバルシャッターの2種類があります。

ローリングシャッターは、センサーの横数ラインを１つのブロックにして順次情報を読み出す方式で、高速で動く被写体を撮影すると画像が歪む「ローリングシャッター歪み」が発生する可能性があります。一方、グローバルシャッターはセンサー全面の情報を一度に読み出すため、ローリングシャッター歪みは発生しません。グローバルシャッターは主にCCDセンサーで用いられていましたが、近年ではCMOSセンサーでも実現されています。

シャッター速度

シャッター速度は、露光時間を調整するための重要な要素です。カメラに内蔵された露光計やコンピュータが適切な秒時に調整できます。通常、シャッター速度は倍数系列で表示され、露光時間が約2倍ずつ変化します。手動でシャッターの開閉を制御する「バルブ撮影」や、シャッターを開いたままにする「タイム撮影」などのモードもあります。

シャッター速度は、通常分母のみで表示されますが、1秒を超える長時間露出の場合は、秒を表す「"」や「s」を付加して区別します。また、フラッシュ撮影時に使用するX接点シンクロの最速同調速度は、「X」で表示されることがあります。

まとめ

シャッターは、写真撮影において光を制御する重要な機構です。その歴史は古く、技術の進歩とともに様々な種類や制御方式が開発されてきました。シャッターの種類や仕組みを理解することで、より高度な写真表現が可能になります。

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