水晶振動子

水晶振動子について

水晶振動子（Quartz Crystal Unit）は、その圧電効果を利用して高い精度で周波数を発振する受動素子です。クォーツ時計や無線通信、コンピュータなど、さまざまなエレクトロニクス機器に広く利用されています。また、水晶振動子は時折、水晶発振子とも呼ばれます。

原理

水晶振動子の基本原理は、圧電体である水晶結晶に電圧を加えることによって生じる変形にあります。この現象は、ジャックとピエール・キュリーの兄弟によって発見されました。一般的に電気的にはコンデンサのように振る舞う水晶振動子ですが、特定の周波数帯域で誘導性リアクタンスの特性を示し、この動作を利用して発振作用を持つようになります。AT振動子という一般的な形式の水晶振動子は、水晶片を電極で挟み、その間に固定される構造をとっています。このため、自由振動により生成される波形は、正弦波として安定しています。

周波数

発振回路では、トランジスタとコイル・コンデンサの接続によって発振の条件が決まります。例えば、ハートレー発振回路やコルピッツ発振回路などがあります。これらの回路に水晶振動子を接続すると、その固有振動数に基づく発振信号が得られます。この固有振動数は、106オーダーの精度を持ち、特に時間や周波数の基準として非常に重要です。

通常、実用的な水晶振動子の周波数は1 - 20MHzの範囲にあり、それ以上の周波数が必要な場合はオーバートーン発振や周波数逓倍器が使用されます。水晶振動子の特性はその物理的な構造や結晶の切り出し方向によって決まるため、周波数の変更は基本的には難しいですが、外部のキャパシタンスを調整することで微調整が可能です。この技術を利用した回路には、可変水晶発振器（VXO）や電圧制御水晶発振器（VCXO）などがあります。

水晶の切出しの種類

水晶振動子は、様々な切断方式があり、一般的に使用されているものには以下があります。

- ATカット: 現在も広く利用されている方法で、周波数安定性に優れています。このカットは、1933年に古賀逸策博士と高木昇博士によって開発されました。
- SCカット: ATカットの温度変化による影響を減少させるために設計されています。これにより、周波数変動のリスクが減ります。
- BTカット: z軸に対して-49°で切り出された水晶ですが、温度特性が劣るため、現在ではあまり使われていません。

用途

水晶振動子は、かつては主に発振素子として使われていましたが、最近ではセンシングデバイスとしての利用も進められています。具体的には、以下のような分野での活用が見られます。

- 時計: クォーツ時計や腕時計は、特に小型の水晶振動子を用いており、通常は32.768kHzという特定の周波数が使用されます。
- コンピュータ: クロック発振回路として、デジタル機器の正確な動作を支えています。
- 計測機器: 水晶振動子は膜厚計などの計測機器でも利用され、質量変化によって振動数が変わり、精度の高い測定が可能です。
- 無線通信: 水晶フィルタとしても用いられ、特に狭帯域で高い減衰特性が求められる場合に有用です。

このように、水晶振動子は通信、計測、計算といった広範な用途での性能を引き出すために不可欠な部品となっています。近年では、新たなセンシング技術の開発も進められています。

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