シャッダード朝

シャッダード朝：アルメニアとアランを統治したクルド人王朝

シャッダード朝は、10世紀半ばから12世紀末にかけて、現在のアルメニア、アゼルバイジャンの一部を含む地域を支配したクルド人の王朝です。951年にムハンマド・ビン・シャッダードによってドゥヴィン（現在のアルメニア領内）に建国され、最盛期にはクラ川とアラックス川の間の地域を統治しました。

建国と初期の統治

シャッダード朝の創始者ムハンマド・ビン・シャッダードは、一帯を支配していたデイラム人の支配から独立し、自らの王朝を打ち立てました。その後、王朝はアルメニアのバグラトゥニ王家との婚姻関係を通じて勢力を拡大し、ドゥヴィンを拠点として周辺地域を支配下に置きました。

セルジューク朝との関係

11世紀になると、中央アジアからセルジューク朝が侵入し、シャッダード朝もその影響下に入ります。シャッダード朝はセルジューク朝の臣下として貢納を行い、その見返りとして、アルメニアの古都アニの支配権を与えられました。

東ローマ帝国との戦い

シャッダード朝は、東ローマ帝国との間でもたびたび衝突を繰り返しました。1047年から1057年にかけては、東ローマ帝国軍と激しい戦闘を繰り広げ、領土をめぐって争いました。

アニ王家

11世紀後半になると、シャッダード朝は徐々に衰退し、アニを拠点とする一族が独立性を強めました。このアニ王家は、メヌチールなどの君主を輩出し、アニの都市建設に貢献しました。しかし、12世紀に入ると、アニは周辺勢力の侵攻を受け、シャッダード朝の支配は終焉を迎えました。

シャッダード朝の統治者

ムハマド・ビン・シャッダード (Muhammad bin Shaddad、951年-971年)
アリ1世・ビン・ムハマド・ラシュカリ (Ali I bin Muhammad Lashkari、971年-978年)
マルズバン・ビン・ムハンマド (Marzuban bin Muhammad、978年-986年)
アル･ファドル1世・ビン・ムハンマド (Al-Fadl I bin Muhammad、986年-1031年)
アブ・ル・ファト・ムサ (Abu-l-Fa't Musa、1031年-1034年)
アリ2世・ラシュカリ (Ali II Lashkari、1034年-1049年)
アヌーシールヴァーン・ビン・アリ2世・ラシュカリ (Anushirvan bin Ali II Lashkari、1049年)
アブ・ル・アスワー・シャヴール1世・ビン・アル・ファドル1世 (Abu-l-Aswar Shavur I bin al-Fadl I、1049年-1067年)
アル・ファドル・２・ビン・シャヴール1世 (Al Fadl II bin Shavur I、1067-1073年)
アスホット・ビン・シャブール1世 (Ashot bin Shavur I、1067年)
アル・ファドル3世・ビン・アル･ファドル2世 (Al-Fadl III bin al-Fadl II、1073年-1075年)

アニ王家

メヌチール(Menuchir、1075年-1118年)
アブ・ル・アスヴァー・シャブール2世(Abu-l-Asvar Shavur II、1118年-1124年)
ファドル4世・ビン・シャブール2世(Fadl IV bin Shavur II、1125年-?)
マハムード(Mahmud、?-1131年)
クシュチクール(Khushchikr、1131年-?年)
シャッダード(Shaddad、?年-1155年)
ファドル5世(Fadl V、1155年-1161年)
* シャハンシャー(Shahanshah、1164年-1174年)

まとめ

シャッダード朝は、短期間ながらも、アルメニアとアラン地域において独自の文化を築き、周辺の勢力との間で複雑な外交を展開しました。その歴史は、この地域の多様な民族と文化が交錯する様子を物語っています。

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