シャドウ (小説)

シャドウ (Who's the shadow?)

道尾秀介による日本の推理小説『シャドウ』は、7回本格ミステリ大賞を受賞した作品です。この作品は、2007年に刊行され、その年の「このミステリーがすごい!」では第3位、本格ミステリベスト10で第6位、週刊文春ミステリーベスト10で第10位にランクインしました。この評価は、読者から強い支持を受けたことを示しています。

本作は、著者の前作「向日葵の咲かない夏」に寄せられた読者の声への一つの回答とも言える作品です。未解決の思いを綴り、伝えたいメッセージを形にしています。

あらすじ

物語は小学5年生の我茂凰介が主人公です。彼は、進行性の癌で母・咲江を失い、心に大きな傷を抱えることになります。母を亡くした直後、彼の生活には次々と不幸が襲いかかります。幼なじみである亜紀の母親、恵が自ら命を絶つ事件が起き、さらに亜紀も事故に見舞われます。父・洋一郎も精神的に不安定になり、物語は混沌とした状況に陥ります。凰介はこのような悲劇の中で「死」や「存在」についての思索を深め、彼自身の幸せを求めて苦悩します。

登場人物

• - 我茂 凰介（がも おうすけ）：物語の主人公で、小学5年生。相模湾近くの古いマンションに父と住んでいます。母の影響を受けやすく、彼女の嫌うものを同様に嫌う傾向があります。

• - 我茂 洋一郎（がも よういちろう）：凰介の父親で、相模野医科大学病院に勤務しています。咲江の死去後、ムンクの『叫び』の版画を寝室に飾り、心の内を表現しています。

• - 我茂 咲江（がも さきえ）：凰介の母で、病気と闘った後に他界したスクールカウンセラーです。彼女の愛読書は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」です。

• - 水城 徹（みずしろ とおる）：洋一郎の大学時代の同級生で、研究者。家庭生活は冷え切っています。

• - 水城 恵（みずしろ めぐみ）：徹の妻で、咲江の友人。悲劇の中で自ら命を絶ってしまう人物です。

• - 水城 亜紀（みずしろ あき）：凰介の幼なじみで同級生。彼女もまた、痛ましい運命に見舞われます。

• - 田地 宗平（たじ そうへい）：洋一郎と徹の大学教授で、精神科医でもあります。

この作品は、周囲の人々を失った凰介の成長と苦悩を根底に据えています。死後の世界や人の存在、そして人生の意味を問いかける深いテーマが盛り込まれており、読者にとって心に響く内容となっています。映画やドラマ化も期待されるような複雑な人間関係と心理描写があり、読み応えのある一冊です。『シャドウ』は、心の闇と向き合う際の一つの手引きを与えてくれる作品となっています。

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