シャネル・ファイブ・イン・サッポロ

『シャネル・ファイブ・イン・サッポロ』

『シャネル・ファイブ・イン・サッポロ』は、1975年（昭和50年）に日本の音楽シーンに登場したアルバムです。この作品は、アーティスト「原みつるとシャネル・ファイブ」にとって、キャリアの中で2枚目にあたる重要なリリースとなりました。アルバムの形式としては、ライブ音源を中心に構成されており、当時のヒット曲などをカバーした楽曲が多く収録されていますが、バンド自身のオリジナル楽曲も含まれています。

収録曲の中で特筆すべきオリジナル曲には、リードヴォーカルの原みつるが作曲を手掛けたものが挙げられます。具体的には、1973年にシングル盤のA面として発表され、そのB面曲であった「すすきの情話」と共に収録された「ハッキリ小唄」や、1974年にシングルとしてリリースされた「くやし泣き」といった楽曲が収められており、これらはファンにとって既にお馴染みのナンバーでした。このように、アルバムはライブ演奏によるカバー曲と、バンドの個性を示すオリジナル曲が組み合わされた内容となっています。

このアルバムに収録されている音源は、1975年当時、北海道札幌市中央区南4条西3丁目に位置していたクラブ「フレンチカンカン」でのライブパフォーマンスを収録したものです。残念ながら、この歴史あるクラブは現在では営業を終え、存在していません。偶然にも、この「フレンチカンカン」は、アルバムがリリースされた同じ年、1975年11月22日に放送された人気テレビ映画「Gメン'75」の第27話「東京 - 札幌 刑事の道」において、物語の舞台の一つとして登場しています（このエピソードの監督は鷹森立一）。

バンドのフロントマンである原みつるは、このアルバムがリリースされた翌年の1976年（昭和51年）に、自身の名前を「平田満」と改め、ソロアーティストとしての活動を開始します。彼のソロデビューシングルとなった「愛の狩人」のB面には、「札幌 - 長崎 おんな達」という楽曲が収められています。これは、本アルバムの録音地である札幌にちなんだタイトルであり、彼の新しい音楽的な旅立ちを示すと同時に、シャネル・ファイブ時代の活動拠点の一つであった札幌への繋がりを感じさせるものとなっています。

アルバムのサウンドを支えたのは、バンドメンバー自身のアレンジ能力です。ギターを担当した梅村良一と、キーボードを担当した中上おさむが編曲を手掛け、ライブならではの熱気やグルーヴ感を捉えたサウンドを作り上げています。メンバーによる編曲は、彼らの音楽に対する深い理解と、ステージ上での緊密な連携を反映しています。

『シャネル・ファイブ・イン・サッポロ』は、1975年当時の日本のライブハウス、特に地方都市の音楽シーンの雰囲気や、そこで活動していたバンドの姿を伝える貴重な記録です。また、リードヴォーカルである原みつるがソロとして大成する直前の、グループとしての活動を捉えた作品でもあります。このアルバムはキングレコードから発売されましたが、2010年7月時点の情報によれば、残念ながらCD化などの再リリースは行われていないため、現在では簡単に入手することが難しい状況にあります。この作品は、当時の音楽文化や、原みつる（平田満）のキャリアにおける重要な一章を知る上で、歴史的な価値を持つ一枚と言えるでしょう。

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