原みつるとシャネル・ファイブ

グループの概要と活動開始

かつて日本の音楽シーンで活動した「原みつるとシャネル・ファイブ」は、コーラスグループでありロックバンドの側面も持つユニークな存在でした。彼らがレコードデビューを果たしたのは1971年7月です。キングレコードからリリースされたデビューシングル「稚内ブルース」は、作詞・作曲を藤本卓也が手掛けました。このシングルのジャケット表面には「ダイナミック演法第一弾!!」という力強いコピーが掲げられ、グループの大きな売りである演奏技術の高さを前面に押し出していました。また、ジャケットの内面には、前年に大ヒットした加藤登紀子の「知床旅情」や、当時絶大な人気を誇っていた「内山田洋とクール・ファイブ」を意識したとみられる「知床から稚内へ」「長崎から北海道へ」といった文言が記載されており、当時の音楽シーンや流行との関連を示唆しています。リードヴォーカルは、1969年に「原みつるとエリートメン」としてデビューしていた原みつるが担当しました。同年、彼らはカヴァー楽曲を中心としたアルバム『稚内ブルース』を発表しています。

音楽性と演奏技術

「ダイナミック演法」として評されたように、原みつるとシャネル・ファイブは非常に高い演奏技術を持つグループとして知られていました。特に、内山田洋とクール・ファイブからの影響が強く見られ、ムード歌謡やブルース歌謡を得意としていました。しかし、彼らの音楽性はそれだけに留まりません。リードヴォーカルが原みつるの楽曲では歌謡曲路線が中心でしたが、ドラムスとヴォーカルを兼任する新田憲幸がリードヴォーカルを務める場合、そのジャンルは一気に広がりを見せました。歌謡曲はもちろんのこと、ポップス、ジャズのスタンダードナンバー、さらにはノリの良いディスコミュージックまで、多彩なサウンドを自在に演奏できる実力を持っていました。

北海道との関わりと楽曲提供

彼らの活動において特筆すべきは、北海道放送（HBC）との深いつながりです。グループのいくつかの楽曲の出版権は、HBCの関係会社が所有しており、プロモーションなどにおいてHBCとの連携があったことがうかがえます。また、ジャッキー吉川とブルー・コメッツのヒット曲「愛の終りに」の作曲で知られる札幌在住の作曲家、彩木雅夫も原みつるとシャネル・ファイブに楽曲を提供しています。彩木雅夫が経営する会社「ミュージックキャップトーキョー」も、一部の楽曲の出版権をホールドしていました。

彼らの楽曲の中で特に知られているものの一つに「港の五番町」があります。阿久悠作詞、彩木雅夫作曲のこの曲は、1972年に発表され、同時期に愛田健二も競作でリリースしました。この曲は時を経て、1988年9月に演歌歌手の五木ひろしによってカヴァーされます。五木のカヴァー版「港の五番町」は大きな反響を呼び、同年の「第30回日本レコード大賞」で金賞を受賞、さらに「第39回NHK紅白歌合戦」でも歌唱されるなど、彼らが手掛けた楽曲が後世に大きな影響を与える事例となりました。

リリースされた作品

原みつるとシャネル・ファイブは、活動期間中に複数の作品を世に送り出しました。「原みつるとシャネル・ファイブ」名義では、5枚のシングルと、オムニバス盤を含む3枚のアルバムをリリースしています。その後、ヴォーカルの原みつるが「平田満」としてソロ活動を開始してからも、シャネル・ファイブとの関係は続き、「シャネル・ファイブ」単独名義でシングル1枚、さらに「平田満＋シャネル・ファイブ」名義でシングル1枚とアルバム1枚を発表しています。これらの作品群は、グループとしての活動とその後のヴォーカルのソロ活動をサポートしたシャネル・ファイブの軌跡を示しています。

グループ解散後のメンバーの歩み

ヴォーカルの原みつるは、1976年に「平田満」として改めてソロデビュー。「愛の狩人」などのヒット曲を生み出し、このソロ活動期にもシャネル・ファイブはバックバンドとして彼を支え、「平田満&シャネル・ファイブ」名義でのアルバムも制作されました。現在、原みつるは「幸斉たけし」という名義で、作詞・作曲家として音楽制作に携わっています。

他のメンバーもそれぞれ音楽活動を続けています。ドラムスとヴォーカルを担当した新田憲幸は、2004年時点では札幌でアマチュアバンド「アフターファイブ」の中心メンバーとして、また2009年時点では別のバンド「JAVA-JIVE」でラテンロックなどを演奏し、音楽祭などに出演していました。リードギターの梅村良一も、2008年時点では札幌を拠点とするアマチュアバンド「ジャドウズ」でギターを演奏し、北欧系のインストゥルメンタル音楽を追求していました。

現在聴くことができる音源

原みつるとシャネル・ファイブのオリジナル録音のうち、現在CD化されているものは限られています。デビューシングルのA面・B面曲である「稚内ブルース」と「昭和女の子守唄」に加え、シングル「信ずる他にない」と「白い慕情」の3曲が、コンピレーションアルバム『幻の名盤解放箱』シリーズに収録されCD化されています。また、彼らがカヴァーした「長崎は今日も雨だった」は、1989年にリリースされたオムニバスアルバム『昭和のうた5 -昭和41年 - 61年-』に収録され、CDとして入手可能です。かつて「ダイナミック演法」で聴衆を魅了した彼らの音源は、その一部がCDで楽しめる状況にあります。

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