シャプシュ

シャプシュ（špš [šapšu]）は、古代ウガリット神話において太陽を司る女神です。彼女の名前は、バビロニア神話の太陽神シャマシュと共通の語源を持つと考えられています。

天空を巡り、地上世界を隈なく照らすシャプシュは、その光で全てを見通すとされます。神話の中では、物語の重要な転換点に現れ、神々に対して助言を与えることで、物語の展開を大きく左右する役割を担っています。彼女の登場は、物語の進行を促し、停滞した状況を打開する契機となることが多いです。

特に、『バアルとアナト』の神話において、シャプシュは常にバアルの味方として描かれています。彼女は、バアルを支援する数少ない神の一人であり、物語の中で重要な役割を果たします。妹である女神アナトが、殺されたバアルの遺体を探すことを懇願した際、シャプシュはその願いを聞き入れ、自らの光でバアルの遺体を探し出す手助けをしました。この行動は、バアルの復活への第一歩となり、物語の展開を大きく進めることになります。

バアルが復活した後も、シャプシュの役割は続きます。バアルとの争いを再開しようとしたモートに対し、シャプシュは「もしあなたがこれ以上戦いを続けるつもりならば、最高神であるイルがあなたから王権を剥奪するだろう」と警告しました。このシャプシュの言葉は、モートにとって大きな脅威となり、彼は恐れを抱きました。その結果、モートは自主的にバアルの王権を認め、争いから手を引くことを決意しました。シャプシュのこの行動は、バアルの勝利を決定的なものとし、神々の世界の安定に大きく貢献しました。

シャプシュは、太陽の光のように、常に正義と秩序を照らし出す存在として、ウガリット神話において重要な地位を占めています。彼女の存在は、神々の世界のバランスを保ち、物語の進行を円滑にする上で欠かせないものでした。

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