シャヘド136

HESA・シャヘド136 (ゲラン2)

HESA・シャヘド136は、イランのシャヘド航空産業が開発・製造した自律型スウォーム（群れ）行動が可能な徘徊型ドローンです。遠距離から地上の目標を攻撃することを主な目的として設計されており、その比較的安価な価格から、一度に多数の機体を敵地に侵入させ、防空システムを飽和させる戦術に用いられます。
ロシア軍では「ゲラン2」という名称で運用されています。

概要

外観

シャヘド136は、ブレンデッドウィング状の中央胴体と、翼端に安定板兼ラダーを備えたクリップトデルタ翼が特徴的です。機首には30-50kgの弾頭、胴体後部にはエンジンを搭載し、2翅の推進式プロペラで駆動します。全長は約3.5m、翼幅は約2.5m、重量は約200kg。飛行速度は185km/h以上、航続距離は1,800~2,500kmと推定されています。

運用

シャヘド136は、複数の機体を格納できる発射ラックから発射されます。発射台とドローンの運搬性が高いため、軍用トラックや民間トラックの荷台に容易に搭載可能です。発射時には、RATO（ロケットアシスト離陸）を用いて初速を上げ、その後はイラン製のMD-550エンジンで飛行します。このエンジンは、ドイツのリンバッハ社製L550Eエンジンのコピーであり、他のイラン製ドローンにも使用されています。

電子装備

シャヘド136には、アメリカ、中国、スウェーデン、日本など、様々な国の部品が使用されています。特に、アメリカ企業のアルテラ製プロセッサ、アナログ・デバイセズ製無線モジュール、マイクロチップ・テクノロジー製LDOチップなどが搭載されていると考えられています。また、日本の電気機器メーカー製のカメラや汎用リレー、サーボモーターなども使用されているとの情報があります。

シャヘド131との比較

シャヘド136は、小型のシャヘド131と外見が酷似していますが、翼端安定板の形状が異なります。シャヘド131では上向きのみの安定板であるのに対し、シャヘド136では上下に伸びています。また、両機とも慣性航法装置とGPSを搭載しています。

ゲラン2

ロシア軍で使用されているゲラン2は、シャヘド136をベースに、ロシア製の飛行制御ユニットやマイクロプロセッサー、GLONASSなどが組み込まれている可能性があります。また、塗装やマーキングもロシアの軍需品に合わせたものに変更されています。一部報道では、ロシア国内でライセンス生産されていることが示唆されています。

戦歴

シャヘド136（ゲラン2）は、以下の紛争で使用されています。

イエメン内戦: 2020年にフーシ派によって使用されたと報じられています。
2022年ロシアのウクライナ侵攻: ロシア軍がゲラン2として使用。ウクライナのインフラ施設への攻撃に多用され、甚大な被害をもたらしました。

ウクライナでの対抗措置

ウクライナ軍は、MiG-29戦闘機や対空砲火などでシャヘド136の迎撃を試みていますが、その低速・低高度の飛行特性から迎撃は困難を極めています。また、欧米諸国から供与された対ドローン装備も導入されつつあります。

反応

シャヘド136の使用に対し、ウクライナ政府はロシアとイランを強く非難しています。また、アメリカ合衆国国務省は、イランのロシアへの無人機売却は国連安保理決議2231に違反するとの認識を示しています。

まとめ

HESA・シャヘド136は、安価で大量投入が可能な徘徊型ドローンとして、現代戦における新たな脅威となっています。特に、ウクライナにおける戦況では、インフラ施設への攻撃手段として多用され、その有効性と対策の難しさが浮き彫りになっています。

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