RATO

ロケット補助推進離陸（RATO）とは

ロケット補助推進離陸（Rocket Assisted Take Off、略してRATO）とは、航空機が離陸滑走距離を短縮するために、機体に補助推進ロケットを取り付けて点火し、離陸を補助する技術、およびその装置のことです。ロケットエンジンがもたらす強力な推力により、短距離での離陸を可能にするだけでなく、ゼロ距離発進のような極端な機動も実現できる場合があります。

ロケットエンジンを用いるものをRATOと呼ぶ一方、ジェットエンジンを用いるものをジェット補助推進離陸（Jet-fuel Assisted Take Off・JATO）と区別することもあります。しかし、英語圏ではジェット（噴気）を補助に用いるという意味で、両者を包括してJATOと呼ぶのが一般的です。

RATOの歴史

RATOの歴史は、1930年代にまで遡ります。1937年には、ドイツのヴァルターHWK 109-500ロケットが、Ar234爆撃機やMe321「ギガント」輸送グライダーの離陸補助に用いられました。これらのロケットは、使用後にパラシュートで回収され再利用されていました。BMW 109-718ロケットは、硝酸と炭化水素燃料を推進剤とし、1,000 kg（2,200 lb）の推力を発揮しました。

第二次世界大戦後、イギリスではドイツの技術を基に、ブリストル・シドレー BS.605、ネイピア スコーピオン、デ・ハビランド スプライトなどのロケットが開発されましたが、1957年度国防白書の影響でミサイル万能論が主流となり、有人戦闘機の開発が縮小されたため、これらのロケットは試験的な運用にとどまりました。

RATOの必要性

通常の飛行場であれば、長大な舗装滑走路があれば航空機は自力で離陸できます。しかし、以下の状況ではRATOが必要となる場合があります。

エンジン出力不足

機体の重量に対してエンジン出力が不足している場合、通常の滑走路では離陸できません。RATOを使用することで、加速力を向上させ、離陸を可能にします。また、滑走距離を短縮することで、離陸事故のリスクを減らすこともできます。ドイツ空軍のAr234爆撃機やMe321「ギガント」輸送グライダーがこの例に該当します。大日本帝国海軍では、空母発進補助用として開発されたRATOを、陸上機である橘花の離陸補助に用いた例もあります。

滑走路が短い場合

短い滑走路しかない飛行場での運用や、より短い距離での離陸が必要な場合に、RATOは有効です。C-130輸送機は、南極基地への輸送や、滑走路の短い飛行場での運用によく使用されます。また、クレディブル・スポーツ作戦では、サッカースタジアムでの強行離着陸のため、C-130に離陸用と着陸用（逆噴射）のRATOが多数搭載される予定でしたが、試験飛行で事故が発生したため計画は中止されました。

航空母艦からの発艦

第二次世界大戦中、航空母艦の限られた飛行甲板から、特に重量のある爆撃機や攻撃機を発艦させるには、カタパルトが不可欠でした。しかし、大日本帝国海軍は航空母艦用のカタパルト開発に失敗したため、RATOが必要となりました。全備状態の天山や流星がこの例に該当しますが、流星は終戦までに量産が間に合いませんでした。RATO自体は昭和19年頃には開発が完了していましたが、マリアナ沖海戦以降、大日本帝国海軍は機動部隊としての運用能力を失っており、RATOが実戦で使用されることはありませんでした。

カタパルト非搭載艦船からの航空機射出

第二次世界大戦初期のイギリスでは、商船に陸上機を搭載し、必要に応じて発進させて敵機やUボートに対処するCAMシップが運用されていました。初期のCAMシップではRATOが発進に使用されました。その後、カタパルトが設置されるようになりました。

迎撃戦闘機の短時間上昇

ドイツ空軍は、敵爆撃機の迎撃のため、Me262ジェット戦闘機にRATOを搭載し、短時間で高高度まで上昇させる実験を行いました。実戦投入の有無は不明です。

ゼロ距離発進

滑走路を使用しないゼロ距離発進には、強力な加速力が必要になります。RATOは、カタパルトと併用したり、単独で使用したりして、この発進を可能にします。アメリカ空軍、西ドイツ空軍、ソ連軍などが試験に成功しましたが、実用化には至りませんでした。

RATOの運用

RATOロケットは、燃焼が終了すると機体から切り離されて投棄されます。陸上で運用されたAr234やMe321のロケットは、地上で回収され再利用されました。一方、CAMシップや流星のように海上に投棄される場合は、基本的に使い捨てとなりました。

出典

Wikipedia

関連項目

補助推進離陸
アフターバーナー

外部リンク

* Video (Archive) of the Heinkel He 111 fitted with Walter's rocket boosters

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