シャミセンガイ

シャミセンガイ（三味線貝）

シャミセンガイは、腕足動物門に属し、無穴目に分類される生物です。一般的にはシャミセンガイ科の総称を指しますが、特にその中での一種であるLingula jaspidea（和名：ドングリシャミセンガイ）を示すこともあります。名前の「貝」は、その殻の外見に由来していますが、実際には貝類とは異なる生物です。

形態的特徴

この生物は、尾部には筋肉が存在するものの、内臓はすべて殻の内部に収められています。殻は二枚貝に似て見えるものの、シャミセンガイは腹背に殻を持つ点が大きな違いです。殻を開けると、その内側には一対のバネに似た構造（触手冠）があり、ここには短い触手が沢山並んでいて、繊毛を持つ触手は、水中のデトリタスなどを捕集して摂食するための器官として機能します。その特有の外観は、日本国内では三味線に形容され、対照的に中国では舌やモヤシのようだと表現され、命名されています。

生きている化石？

シャミセンガイは、古代から形を変えずに生きている化石の一つと多くの人に認識されています。しかし、実際には外見は似ているものの、内部の構造はかなり変化を遂げており、本当の意味での生きている化石と見なすことには異論もあります。たとえば、2003年には、殻の形状の大きな変化から、その分類が見直され、これまでの「生きた化石」という見解が否定されています。

生息地域

シャミセンガイは温帯から熱帯にかけて、特に砂泥が豊富な海底に生息しています。日本では青森県以南の地域に分布しており、砂泥に縦に穴を掘り、尾部を下にして潜っています。中国では渤海湾以南、さらには台湾でも見られますが、近年では生息数が減少し、地域によっては絶滅の危機に瀕している状況です。

研究の歴史

日本のエドワード・S・モースは、明治10年にシャミセンガイの研究を目的に来日し、江ノ島臨海実験所で約1ヶ月間調査を行いました。その成果として、ミドリシャミセンガイを500個体も捕獲しました。彼の研究は、後の生物学的理解に寄与する重要な活動となりました。

食用としての利用

特に日本では、ミドリシャミセンガイ（L. anatina）が代表的な食材として知られており、岡山県の児島湾や有明海で捕獲されます。有明海では「メカジャ」（女冠者）と名付けられ、福岡県や佐賀県周辺では食用として多く利用されています。殻と触手冠の中にある筋肉や内臓が食べられ、その味は濃厚で、二枚貝や甲殻類に似た特有の旨みを持っています。料理方法としては味噌汁や塩茹で、煮付けなど様々なスタイルで楽しまれています。

中国では、広東省や広西チワン族自治区で「海豆芽」と称され、炒め物として料理されます。養殖に関する研究も進んでおり、今後の市場での需要拡大が期待されています。

種類

シャミセンガイに属する主な種としては、以下のものが挙げられます：

• - Credolingula olferievi
• - Credolingula subtruncata
• - Glottidia albida
• - Glottidia antarctica
• - Lingula anatina（ミドリシャミセンガイ）
• - Lingula rostrum（ドングリシャミセンガイ）

これらの種は、それぞれ異なる特徴を持ちながら、同じ系統に属しています。

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