シャミル・バサエフ

シャミル・バサエフの生涯と影響

シャミル・サルマノヴィチ・バサエフは1965年1月14日に、チェチェン共和国南部のドゥイシュニ・ヴェジェノ村で誕生しました。彼はヤルホロイ部族の出身で、19世紀のチェチェン抵抗運動の指導者であるシャミールの名前を継承しています。バサエフは、チェチェン独立派の強硬派指導者として知られ、ロシアとの抗争において重要な役割を果たしました。

彼のキャリアは、南コーカサスの野戦指揮官として始まり、長年にわたるロシア軍とのゲリラ戦に従事しました。バサエフは、ロシア兵の撤退を目指す中で、多くの無辜の民間人を人質としてつかまえるという冷酷な戦術を取ったことで知られています。彼は1997年から1998年の間、アスラン・マスハドフ政権で離脱国家の副首相も務めました。さらに、2003年からは「アミール」という称号を名乗り、彼の評判はますます悪名高くなり、同時に仲間の中での地位も確立されていきました。

学生時代と親ロシア派時代

1987年にモスクワ土地整理技師専門学校に入学したものの、成績不振で1年後に除籍されました。以降はモスクワでコンピュータ売買に従事しながら生計を立てていましたが、1989年から1991年までイスタンブールのイスラム大学で学びました。この時期にカフカス人民同盟軍に参加し、1991年のクーデター未遂事件では、エリツィン側に立って防衛活動に参加しました。

しかし、バサエフは1991年11月にトルコでの航空機ハイジャックを起こし、すぐに有名になります。その後、アブハジア紛争においては「チェチェン大隊」として活動しました。彼の軍事行動はロシア連邦軍の影響を受けているとの噂が立つこともありましたが、バサエフはこれを否定しました。独立派の活動家たちは、バサエフがロシアの情報機関とつながっているという批判に対して反論し、彼の名声を守ろうとしました。

チェチェン独立派としての活動

1994年に第一次チェチェン戦争が勃発すると、バサエフは独立派の指導者ジョハル・ドゥダエフの下で戦場に赴き、グロズヌイ守備隊の指揮官に任命されます。彼は1995年のブジョンノフスク病院占拠事件の首謀者となり、和平を阻止するロシア政府に譲歩を引き出すことに成功し、民族的英雄として称えられるようになります。しかし、ロシア側の報復も厳しく、彼の家族が空爆によって犠牲になるなど、苦しい現実が続きました。

1996年には第一次チェチェン戦争が一応の終結を見て、彼は大統領選挙に立候補しますが、アスラン・マスハドフに敗れました。その後、マスハドフ政権で政権の要職に就くものの、次第に路線対立が生じ、バサエフは独自の武装勢力を強化していきました。

テロリズムとの関与と評価

1999年に入ると、バサエフはダゲスタンに侵入し、第二次チェチェン戦争を引き起こします。この間に発生したモスクワ劇場占拠事件や一連の自爆テロ事件は、彼が関与しているとされました。2005年3月、アスラン・マスハドフが殺害されると、バサエフは「聖戦」を叫び、新たなテロ行為を予告しました。

2006年7月10日、彼はロシア南部でドローン攻撃によって殺害され、41歳でこの世を去ります。彼の行動は、多くの支持を集める一方で、テロリズムとの関係から、独立派全体に悪影響を及ぼすとの意見もありました。一部の人々は、バサエフとロシア当局が共謀しているのではないかとの疑念を抱きました。彼の運動は、その後のチェチェン問題における重要な要素となりました。

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