シャルル・ゴーディショー＝ボープレ

シャルル・ゴーディショー＝ボープレ（Charles Gaudichaud-Beaupré）は、1789年9月4日に生を受け、1854年1月16日に世を去ったフランスの重要な植物学者です。彼の生涯は、世界の様々な地域を巡る探検航海と、それに伴う膨大な植物標本の収集、そして植物の形態や構造に関する理論的な探求によって特徴づけられます。

若年期と教育

アングレームで生まれたゴーディショー＝ボープレは、当初、故郷に近いコニャックや、学問の中心地であるパリで化学や薬理学を修めました。コニャックで化学研究室での実務経験を積んだ後、パリの自然史博物館にいた植物学者の招聘を受け、首都へと移ります。さらに、1811年から1814年の間には、アントウェルペンの海軍医学校で、後の航海に役立つであろう専門知識を深めました。

探検航海への参加

フレシネの世界周航（1817-1820年）

ゴーディショー＝ボープレのキャリアにおいて最も重要な出来事の一つは、1817年に出発したルイ・ド・フレシネ少佐が指揮する世界周航探検隊への参加でした。彼は博物学者ジャン・ルネ・コンスタン・クアらと共に、この航海に植物学者として同行することに選ばれます。探検船ユラニー号とフィジシエンヌ号によるこの遠征は、約3年間にわたり、オーストラリア、マリアナ諸島、ハワイ諸島をはじめとする太平洋の島々、そして南米大陸沿岸など、地球上の広範な地域を巡りました。ゴーディショー＝ボープレは各地で精力的に植物の収集と観察を行いましたが、航海の終盤、フォークランド諸島沖でユラニー号が難破するという危機に遭遇します。この窮地において、彼は自身が苦労して集めた貴重な植物標本と詳細な調査記録を救い出すために懸命に尽力し、学術的な成果を失うことなくフランスへの帰還を果たしました。

その後の探検

フレシネ航海から帰国した後も、ゴーディショー＝ボープレの探検活動は続きました。1830年から1832年にかけては、調査船エルミニー号に乗り込み、ブラジル、チリ、ペルーといった南米諸国を巡る植物調査旅行を行いました。さらに、1836年から1837年には、オーギュスト・ニコラ・ヴァイヤン提督が率いるコルベット船ボニット号による新たな世界周航にも植物学者として参加し、広範な地域で植物学的研究を進めました。

学術的貢献とフィトン説

これらの長期にわたる探検航海で蓄積された膨大な知識と経験に基づき、ゴーディショー＝ボープレは植物の構造に関する独創的な理論を展開しました。1841年に彼は、特にシダ植物や単子葉植物といった、地上茎が発達せず短縮している植物について、その茎が個々の葉の基部が集合・融合して形成されたものであると解釈する「フィトン説（Phyton theory）」を提唱しました。これは、植物体を「フィトン」と呼ばれる基本的な単位の繰り返しとして捉える考え方で、当時の植物形態学における議論に新たな視点をもたらしました。

遺産と著作

シャルル・ゴーディショー＝ボープレの植物学への貢献は、今日でも高く評価されています。その功績を称え、キントラノオ科（Malpighiaceae）に属する植物の属の一つには、彼の名にちなんで「ガウディカウディア属（Gaudichaudia）」と命名されています。

また、彼は自身の参加した探検航海での植物学的な成果を詳細な報告書として世に問いました。主な著作としては、フレシネ航海の植物学報告書『Voyage autour du monde... sur l'Uranie et la Physicienne』（クリスティアーン・ヘンドリック・ペルソーンらとの共著、1826年）や、ボニット号航海の報告書『Voyage autour du monde... sur la corvette La Bonite』（1844-1846年）があります。さらに、植物の器官形成などに関する彼の理論をまとめた『Recherches générales sur l'organographie, la physiologie et l'organogénie des végétaux』（1841年）も重要な著作です。

ゴーディショー＝ボープレは、精力的なフィールドワークと理論的研究の両面から、19世紀前半の植物学の発展に貢献した、探検家肌の優れた学者でした。彼の収集した標本や著述は、その後の植物研究の重要な基盤の一つとなっています。

もう一度検索