シャルル・ジョゼフ (リーニュ公)

シャルル・ジョゼフ・ド・リーニュ：華麗なる生涯と不朽の言葉

シャルル・ジョゼフ・ラモラール・フランソワ・アレクシ・ド・リーニュ（1735年-1814年）は、オーストリア帝国の元帥であり、著名な著述家として知られる、第7代リーニュ公爵です。 その名を冠した「リーニュ公」として広く知られ、ウィーン会議を「会議は踊る、されど進まず(Le Congrès ne marche pas, il danse)」と皮肉交じりに評した言葉は、現在でも広く引用されています。輝かしい軍歴、華やかな宮廷生活、そして広範な交友関係、そして多岐にわたる著作活動。本稿では、魅力的な人物像であるシャルル・ジョゼフ・ド・リーニュの生涯を詳細に辿ります。

軍人としての華々しいキャリア

オーストリア領ネーデルラント（現在のベルギー）のブリュッセルに生まれたシャルル・ジョゼフは、幼少期から軍務に就き、七年戦争でその才能を開花させました。ヴロツワフ、ロイテン、ホッホキルヒ、マクセンといった主要な戦いで勇敢さを示し、特にロイテンの戦いでは、若き大尉ながら混乱の中で部隊を率い、敵の砲撃を巧みに回避し、ケーニヒスブルクへの撤退を成功させました。この戦いの活躍は、彼の軍事的才能を証明する象徴的な出来事となりました。

その後も順調に昇進を重ね、少佐、中佐、大佐を経て、少将、中将へと昇進。金羊毛騎士団員にも叙任され、高い地位と名誉を獲得しました。 さらに、第30歩兵連隊の連隊所有者にもなり、軍における地位を確固たるものにしました。

ヨーロッパを舞台に活躍

七年戦争後、皇帝ヨーゼフ2世の親友、相談役として、膨大な遺産と領地を相続したシャルル・ジョゼフは、華麗な宮廷生活を送りました。しかし、バイエルン継承戦争の勃発により、再び軍務に復帰。戦争が短期間で終結した後、彼はヨーロッパ各地を旅しました。イギリス、ドイツ、イタリア、スイス、フランスなど、様々な国の宮廷、軍営、サロンを訪れ、著名な哲学者や科学者たちと交流を深めました。 驚くべきことに、敵国であったプロイセンのフリードリヒ2世に傾倒し、そのシュレージエン併合を正当化するまでに至るなど、独特の視点と柔軟性を持ち合わせていました。

ロシアのエカチェリーナ2世のクリミア視察に同行するなど、国際的な舞台でも活躍。歩兵大将に昇進し、墺土戦争にも参加、ベオグラード包囲戦の勝利に貢献しました。その功績からマリア・テレジア司令官十字章を受章しました。

革命の渦中と晩年

ベオグラード包囲戦後、故国ベルギーではブラバント革命が勃発。この独立運動には、シャルル・ジョゼフの息子を含む多くの親族が参加していました。革命の指導者になるよう要請を受けましたが、彼はこれを拒否しました。「私は冬には蜂起しないのだ」という言葉が、彼の慎重な性格と現実的な政治判断を示しています。

ヨーゼフ2世の死後も、ウィーンにとどまり、フランス革命戦争で彼の領地はフランス軍に占領され、長男も戦死するなど、苦難の時期を経験しました。

晩年は、トラバント近衛隊と宮廷近衛隊の隊長を務め、元帥にまで昇進。領地を失ったものの、莫大な財産により、豪華な生活を送ることができ、その余生を著述に捧げました。ウィーン会議に関して残した「会議は踊る、されど進まず」という言葉は、彼のユーモラスでありながら鋭い洞察力を示す名言として、現在まで語り継がれています。

赤色の服と馬車に乗ってウィーンの街を走る彼の姿は、人々の注目を集め、歴史上もっとも魅力的な人物の一人として評されました。1814年、ウィーンで79歳で亡くなり、カーレンベルク墓地に埋葬されました。

多彩な著作活動

シャルル・ジョゼフは、膨大な著作を残しました。その著作は、軍事論、文学、感傷的なエッセイなど、多様なジャンルに及び、34巻にも及ぶ全集にまとめられました。死後も著作は出版され続け、フランス語、ドイツ語、英語などに翻訳され、広く読まれました。軍事論『軍事上の偏見と幻想』は、18世紀後半の軍事思想史における重要な著作とされています。また、オイゲン・フォン・ザヴォイエンの疑似自伝も高く評価されています。

家族とその後

シャルル・ジョゼフは、リヒテンシュタイン公の妹と結婚し、7人の子をもうけました。しかし、庶子もおり、複雑な家族関係を持っていました。長男シャルルの非嫡出の娘を養女として迎え入れ、彼女は「ティティナ」と呼ばれ、後に皇帝フランツ・ヨーゼフ1世暗殺未遂事件で皇帝を救った人物と結婚しています。孫にはベルギーの政治家もおり、彼の血筋はその後もヨーロッパの歴史に影響を与え続けました。

シャルル・ジョゼフ・ド・リーニュは、将軍、著述家、そして外交官として、華麗な生涯を送りました。彼の残した言葉や著作は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。その魅力的な人物像は、後世の人々にとって永遠の興味の対象となるでしょう。

もう一度検索