シャルル・ド・モンブラン

シャルル・フェルディナン・カミーユ・ヒスラン・デカントン・ド・モンブラン

シャルル・フェルディナン・カミーユ・ヒスラン・デカントン・ド・モンブラン（1833年5月11日 - 1894年1月22日）は、フランスとベルギーの貴族、実業家、外交官であり、日本においては「白山伯」として知られています。彼の生涯は、19世紀の国際社会における複雑な政治と経済の動きと深く結びついています。

生い立ちと家系

1833年、モンブランはパリでシャルル・アルベリック・クレマン・デカントン・ド・モンブランの長男として生まれました。彼の父は、ベルギーのインゲルムンステル男爵領を譲り受け、男爵となりました。その後、伯爵位も与えられ、フランスとベルギーの両方の貴族となりました。モンブラン自身はフランスで育ち、フランス国籍を持っていましたが、弟たちはベルギー国籍を取得しました。

日本との出会い

モンブランは、1854年にペリーが日本を開国したというニュースに触発され、日本への渡航を熱望しました。1858年には、フランス特命全権使節グロ男爵に随行して初来日を果たし、日仏通商条約締結に関わりました。その後、フィリピンでの学術調査を経てフランスに帰国し、父の死を看取りました。

1862年、モンブランは再び日本を訪れ、横浜に滞在しました。この際、公使デュシェーヌ・ド・ベルクールと交流し、帰国時には私設秘書として斎藤健次郎を伴い、日本語や日本文化の研究に励みました。1863年末には、江戸幕府が横浜の鎖港を求めて派遣した交渉団と接触し、パリでの会談を斡旋しました。さらに1865年にも、幕府使節との交渉を試みましたが、あまり信用されませんでした。

薩摩藩との交流

同時期に、薩摩藩の密航留学生たちがロンドンに派遣されていました。モンブランは、幕府使節との交渉が不調に終わった後、斎藤を伴いイギリスへ渡り、薩摩藩留学団に接触し、その世話役を買って出ました。彼は、薩摩藩に貿易商社設立の話を持ちかけ、薩摩藩もこれに賛同し、貿易契約が締結されました。モンブランは、パリで開催された地理学協会で、薩摩藩の主張に沿った内容を発表し、薩摩藩の立場を擁護しました。

また、モンブランは薩摩藩の留学生たちの面倒を見、フランスでの留学生活を支援しました。1867年のパリ万博では、薩摩藩はモンブランを代理人として、幕府とは別に出展することとなりました。この際、幕府との間で出展名義をめぐる交渉が行われましたが、最終的には「薩摩太守の政府」として出展が認められました。モンブランは、パリの新聞に「日本は徳川将軍の専制国家ではなく、各地の大名が林立する領邦国家である」という記事を掲載し、薩摩藩に有利となるよう世論を形成しました。

明治維新前後

モンブランは、薩摩藩から軍制改革顧問に招聘され、鹿児島に滞在するなど、薩摩藩との関係を深めました。しかし、薩摩藩は後にイギリス式兵制を採用し、モンブランへの過度な依存を避けるようになります。1867年に大政奉還が行われ、政局が流動化する中、モンブランは新政府の外交顧問として、外国事務局判事の五代友厚を支え、パークスやロッシュとの交渉に尽力しました。これらの活動が認められ、明治天皇の各国公使謁見が実現しました。

日本総領事としての活動と解任

新政府は、モンブランをパリの日本公務弁理職（総領事）に任じました。モンブランは、パリに日本総領事館を開設し、日本のキリシタン弾圧政策を弁明するとともに、日露国交交渉を試みましたが、フランス人であったため、日本外交の代表権を持つ公使就任は拒否されました。普仏戦争の影響でパリが混乱すると、モンブランは解任され、鮫島尚信が後任となりました。

その後

解任後も、モンブランはパリに留まり、日本文化研究協会を設立し、フランスにおける日本語・日本文化研究を推進しました。著書には、『日本事情』や、『鳩翁道話』のフランス語訳などがあります。1894年、モンブランはパリで独身のまま死去しました。

彼は、日本の歴史においてしばしば誤解されることもありましたが、近代初期の日本外交において重要な役割を果たした人物でした。

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