鮫島尚信

鮫島尚信：明治初期の外交を担った薩摩藩士

鮫島尚信は、弘化2年（1845年）に薩摩藩の藩医の息子として生まれました。幼名は誠蔵。兄に鮫島武之助、弟に実業家の鮫島盛がいます。

蘭学から英学へ

15歳で蘭学を学んだ後、藩命により長崎へ遊学。当初は医学を志していましたが、時代の流れを敏感に感じ取り、上野敬助（後の上野景範）と同様に、蘭学から英学へと専攻を切り替えました。長崎では、何礼之の塾や瓜生寅が主宰する英学塾「培社」で英語を習得しました。

藩立洋学校での活動

元治元年（1864年）、藩立洋学校「開成所」で訓導（句読士）を務めます。この時、長崎の培社の実質的な運営者であった前島密を英語講師として招いています。語学力を活かし、教育の現場でもその才能を発揮しました。

イギリス、アメリカ留学

慶応元年（1865年）、薩摩藩の留学生として、森有礼、長澤鼎、吉田清成、五代友厚らと共にイギリスに留学。ユニヴァーシティ・カレッジ・[[ロンドン]]で約1年間、法文学を学びました。その後、慶応3年（1867年）には、森有礼、長沢鼎、吉田清成、畠山義成、松村淳蔵らと共にアメリカへ渡り、トマス・レイク・ハリスの結社「新生社」で、ブドウ園で働きながら学びました。

しかし、意見の対立から森有礼と鮫島は帰国、吉田、畠山、松村はラトガース大学へ移りました。この留学経験が、後の外交官としての基礎を築いたと言えるでしょう。

外交官としての活躍

帰国後、ハリスの勧めもあり、明治元年（1868年）に日本へ帰国。外国官権判事、東京府判事などを経て、明治3年（1870年）には外務大丞に就任。欧州差遣、少弁務使を経て、明治4年（1871年）にはロンドンに着任しました。

明治5年（1872年）には中弁務使に昇進しパリに着任。その後、弁理公使、特命全権公使と昇進を重ねました。パリでは、お雇い外国人のフレデリック・マーシャルと共に、若い日本の外交官向けに『Diplomatic Guide』（邦題：外国交法案内）を作成しました。これは、日本の外交実務の基礎となる重要な書物でした。

また、ギュスターヴ・エミール・ボアソナードに日本人留学生への法律学の指導を依頼。このことがきっかけで、ボアソナードが日本へお雇い外国人として赴任することになりました。

明治7年（1874年）に帰国し、翌年には外務省の次官である外務大輔に就任しています。

条約改正交渉と突然の死

明治11年（1878年）には、再び在仏特命全権公使としてフランスに赴任。外務卿の寺島宗則から条約改正交渉に入るよう訓令を受けました。この時、ベルギー公使も兼務。条約改正はイギリスの意向次第という情報を得ていました。

しかし、在仏公使在任中、持病の肺病によりパリで倒れ、35歳という若さで亡くなりました。終生の友であった森有礼がその葬儀に駆けつけ、「気高き働き人」と弔辞を述べたと言われています。

墓所と顕彰

鮫島尚信の墓所は青山霊園にあります。また、パリのモンパルナス墓地には日本式の墓が建てられています。

さらに、鹿児島中央駅前東口広場には、彫刻家の中村晋也が制作した薩摩藩英国留学生の像『若き薩摩の群像』の一人として銅像が建てられています。この像は、彼の功績を後世に伝えるものです。

著作と関連資料

鮫島尚信の研究は、現在も続けられています。
主な著作としては、『鮫島尚信在欧外交書簡録』（鮫島文書研究会編）があり、彼の外交活動を知る上で貴重な資料となっています。
また、彼が作成に携わった『Diplomatic Guide』は、外交官のバイブルとして長く使われました。

その他、多数の研究論文や関連文献があり、彼の生涯と業績を多角的に知ることができます。

鮫島尚信は、明治初期の激動期に、外交官として国際社会の中で日本の地位向上に尽力しました。その若すぎる死は惜しまれますが、彼の遺した功績は、現代の日本にも深く根付いていると言えるでしょう。

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