シャルル＝ニコラ・コシャン

シャルル＝ニコラ・コシャン（息子）は、1715年2月22日にパリで生まれ、1790年4月29日にその生涯を終えたフランスの傑出した版画家です。彼には同名の版画家である父親がいたため、区別するために「息子のシャルル＝ニコラ・コシャン」、「若い方のコシャン」、「コシャン2世」などと呼ばれました。

コシャンは、芸術家一家に生まれました。父親は同名の版画家であり、母親のルイーズ＝マグドレーヌ・ホルテルメルもまた版画を生業としていました。母方の親族にも版画家や宮廷画家がおり、母の姉であるマリー・アンヌ・ホルテルメルは国王の宮廷版画家ニコラ＝アンリ・タルデューと結婚し、母の妹マリー・ニコル・ホルテルメルは宮廷肖像画家アレクシス・シモン・ベルの妻でした。このような恵まれた環境で、彼は幼い頃から芸術に触れ、才能を育みました。

彼は早くから彫刻家としての才能を認められ、1737年頃には国王ルイ15世から直接注文を受け、宮廷の儀式や出来事を題材とした版画を制作するようになります。そして1739年には、国王の日常的な業務や娯楽を司る「メニュ・プレジール・デュ・ロワ（Menus-Plaisirs du Roi）」の公式版画家に任命され、王室御用達の芸術家としての地位を確立しました。

コシャンの経歴における重要な転機の一つに、1749年から1751年にかけてのイタリア旅行があります。彼はルイ15世の公妾であり芸術の後援者であったポンパドゥール夫人に選ばれ、夫人の弟で後に王室造営物総監となるアベル＝フランソワ・ポワソン・ド・ヴァンディエール（マリニー侯爵）に随行しました。この旅には、建築家のジャック＝ジェルマン・スフロや美術評論家のジャン・ベルナールといった当時の著名な知識人や芸術家も同行しており、イタリアの古代遺跡や美術を詳細に調査することが目的でした。この旅行の成果として、コシャンは同行したジェローム・シャルル・ベリカールと共に、ヴェスヴィオ山の噴火によって埋没した古代都市ヘルクラネウムの遺物に関する著作を1753年に出版し、ヨーロッパの学術界に貢献しました。

フランス帰国後、彼は1751年11月に王立絵画彫刻アカデミーの会員に推薦されました。特筆すべきは、通常義務付けられている入会申請作品（受付作品）を提出する前にアカデミーの職務に就き、作品を発表したのはそれからかなり後の1763年であったことです。また、1752年に王室筆頭画家シャルル＝アントワーヌ・コワペルが亡くなった後、コシャンはその後任として国王の美術品管理に関わる重要な職務に任命され、ルーブル宮殿内に自身の部屋を与えられました。彼は王室造営物総監となったマリニー侯爵の元で、フランス王室の芸術活動において中心的な役割を果たしました。

版画家としては、歴史画、肖像画、書籍の挿絵など、多岐にわたる分野で多くの作品を制作しました。彼の洗練されたスタイルは、18世紀フランスの版画芸術に大きな影響を与えました。アカデミーでは事務長も務めるなど、単なる制作活動に留まらず、芸術界の運営においても貢献しました。

シャルル＝ニコラ・コシャン（息子）は、その卓越した版画技術と、王室やアカデミーにおける要職を通じて、当時のフランス美術界において非常に影響力のある人物でした。彼の作品や著作は、18世紀のフランス社会、文化、そして芸術の様子を今に伝えています。

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