シャープール3世

シャープール3世（Shapur III, ? - 388年）は、サーサーン朝ペルシア帝国の第11代君主（シャーハーン・シャー、在位：383年 - 388年）です。彼はシャープール2世の息子であり、先代の君主アルダシール2世の甥にあたるとされていますが、同名の人物が多かった時代のため、明確な断定は難しい状況です。

アルダシール2世と同様に、シャープール3世も貴族の権力増大を抑えることができず、388年に天幕の下敷きになるという不慮の事故で暗殺されたと伝えられています（異説もあります）。この出来事は、ホスロー1世の時代まで、貴族の勢力をいかに抑制するかがサーサーン朝にとって重要な課題であったことを示唆しています。当時のサーサーン朝は、大貴族によって運営されるアルサケス朝と酷似した様相を呈していました。

アルメニア分割

シャープール3世の時代には、先代から続くアルメニア情勢の混乱を収拾するため、ローマ帝国との間でアルメニア分割が合意されました。これは、両国にとってフン族を中心とする遊牧民の動向が安全保障上のより大きな懸念事項となっていたためです。カフカス山脈を越えて侵入してくる遊牧民を抑えることが喫緊の課題であり、両国ともアルメニア情勢で不必要に争うことを避けたいという思惑がありました。その結果、アルメニアは狭い西部と広大な東部に分割されることになりました。

東ローマ帝国の歴史家ファウストスによれば、当時のアルメニアでは、クシャン人やアルサケス家の影響が色濃く残っていたとされています。クシャンの言葉が一般的な用語として用いられていたことからも、アルメニア社会が何らかの一体感を持っていたことがうかがえます。

サーサーン朝は、アルメニア分割を通じてローマ帝国との関係を安定させ、北方からの遊牧民の侵入に対処しようとしましたが、国内では貴族の勢力が増大し、政治的な不安定さが続いていました。シャープール3世の治世は、サーサーン朝が直面していた内憂外患の状況を象徴する時代であったと言えるでしょう。

諸王の王 - ウェイバックマシン（2006年12月15日アーカイブ分）

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