シャープ亀山工場

シャープ亀山工場の変遷

三重県亀山市に位置するシャープ亀山工場は、かつて「世界の亀山」ブランドとして、液晶テレビの生産で世界的に名を馳せました。しかし、その後の市場変化や技術革新の波に翻弄され、幾度も事業転換を余儀なくされてきました。本稿では、同工場の設立から現在に至るまでの歴史と、シャープの経営に与えた影響について詳しく解説します。

設立と「世界の亀山」ブランドの隆盛

2002年、シャープは三重県の企業誘致政策に応じ、巨額の補助金を受けて亀山工場を設立しました。当時、最新鋭の液晶テレビの一貫生産工場として注目を集め、CMでも大々的に紹介されました。2004年からは「世界の亀山」ブランドを冠した液晶テレビを発売し、爆発的な人気を得ました。当時は、液晶テレビの大型化が難しく、プラズマテレビと競合していましたが、シャープの技術革新により液晶テレビが優位に立ちました。

業績悪化と転換期

しかし、2008年のリーマンショックや東アジア企業の猛追により、シャープの業績は悪化しました。2009年には、堺工場が稼働を開始し、亀山工場は液晶テレビの主力工場としての役割を終えました。亀山第1工場は操業を停止し、設備を売却せざるを得ない状況に陥りました。2011年には、iPhoneの登場によりスマートフォン市場が急成長し、液晶ディスプレイの競争も激化しました。シャープは、テレビ用大型液晶ディスプレイの競争力を失い、亀山第2工場も一時的に操業を休止しました。

スマホ用ディスプレイ工場への転換

2011年、シャープはアップルの支援を受けて、第1工場をiPhone用ディスプレイ専用工場として再スタートさせました。これにより、亀山工場はアップルの下請けのような状態になり、iPhoneの売れ行きに大きく左右される不安定な経営を強いられることになりました。2012年には、第2工場でIGZOディスプレイの量産を開始し、タブレットやスマートフォン向けの中小型パネルの生産にシフトしました。IGZOディスプレイは、当初アップル製品に採用されたものの、シャープの経営はアップルの需要に翻弄されました。その後、中国の中小スマホメーカーなど新規顧客の獲得に成功し、業績は一時的に回復しました。

経営悪化と鴻海傘下へ

2014年以降、液晶市場の競争激化や中国スマホメーカーの台頭により、シャープの業績は再び悪化しました。2016年には、鴻海グループに買収され、同グループの一員となりました。シャープは、液晶事業に依存した経営を続けていましたが、2017年のiPhone X以降、有機ELディスプレイが主流になり始め、液晶ディスプレイの競争力はますます低下しました。

テレビ事業の縮小と液晶の最先端開発拠点へ

シャープは、有機ELパネルの開発で出遅れたものの、液晶事業にも大きな投資を続けました。亀山工場は、液晶パネル工場としては依然として世界最先端であり、液晶分野で最も重要な拠点と位置付けられました。しかし、テレビの生産台数は減少し、製造ラインの老朽化も進んでいました。シャープは、テレビの組み立てラインを海外工場に移管する一方、国内工場はスマートファクトリー化を進め、一部の液晶テレビ生産を残す方針を取りました。亀山工場では、iPhone用カメラモジュールの生産も開始されました。

液晶事業の大幅縮小と今後の展望

2020年代に入り、シャープの液晶事業は再び赤字に転落し、2024年には、テレビ用大型パネルの生産から撤退するなど、液晶事業を大幅に縮小する方針を発表しました。亀山工場では、第1工場が車載向けパネルや電子部品、第2工場が中小型パネルの生産を中心に事業を継続しています。しかし、シャープは半導体事業やカメラモジュール事業の売却も発表しており、亀山工場の将来は不透明な状況です。

亀山工場の立地と沿革

亀山工場は、亀山関テクノヒルズ工業団地内に位置しており、交通の便に恵まれています。2002年の設立以来、幾度かの拡張や設備投資を経て、現在の姿になりました。2011年にはアップルの投資により、iPhone用ディスプレイラインが新設されました。2020年には、シャープディスプレイテクノロジー株式会社として分社化されました。

工場の特徴と影響

亀山工場の特徴は、最新鋭設備による液晶テレビの一貫生産と、生産設備のブラックボックス化でした。しかし、液晶ディスプレイのコモディティ化により、シャープは競争力を失い、経営難に陥りました。また、三重県の誘致政策や巨額補助金投入の是非についても、議論を呼びました。工場では、環境に配慮した取り組みも積極的に行われていました。

生産品目

かつては大型液晶テレビやパネルが主力でしたが、現在はスマホ用ディスプレイ、IGZOパネル、車載用パネル、カメラモジュールなど多岐にわたります。

関連情報

シャープ、AQUOS、液晶ディスプレイ、薄型テレビ、クリスタルバレー構想、シャープフレンドショップなどの関連情報があります。

まとめ

シャープ亀山工場は、液晶テレビの隆盛からスマホ向けディスプレイ、そしてカメラモジュールへと、時代の変化とともに事業転換を繰り返してきました。その歴史は、シャープの経営と密接に結びついており、激しい競争にさらされる日本の製造業の現状を象徴しています。今後、亀山工場がどのような未来を歩むのか、引き続き注目されるでしょう。

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