シャーレ

シャーレ（ペトリ皿）とは

シャーレ（ドイツ語: Schale）、またはペトリ皿（英語: Petri dish、Petri plate）は、微生物の培養実験で用いられるガラス製の平皿です。ドイツの細菌学者ユリウス・リヒャルト・ペトリ（1852 - 1921）が発明しました。寒天培地を平板培地として使用するために考案されたもので、現在では一時的な容器として、微生物培養に限らず、広く科学実験で使用されています。理科教育の現場では、小学校・中学校・高校を通じて「ペトリ皿」という名称が用いられています。

構造

シャーレは、わずかに口径の異なる浅い円筒形の容器が2枚で一組となっています。蓋となる上皿はやや大きく浅く、底となる下皿はやや小さく深くなっています。皿のふちは底面と平行に切断されており、静置した際に上皿と下皿が自重で密着し、適度に密閉される構造になっています。

大きさは様々ですが、直径10cm程度のものが一般的です。高さは1cm～2cm程度が標準的ですが、数cm以上の背が高いものもあり、これは腰高シャーレと呼ばれます。

材質は元来ガラス製でしたが、近年ではプラスチック製のものも普及しています。微生物の培養には滅菌が不可欠であり、耐熱性の高い素材が求められます。プラスチック製のシャーレは、製造過程で滅菌済みのものが安価で市販されており、使い捨てできる利便性から広く利用されています。

使用法

本来は、底皿に寒天培地を流し込み、薄い固形培地を作製し、そこに微生物を培養するために使用します。寒天培地を流し込む際には、コンタミネーション（外部からの微生物混入）を避けるため、蓋を完全に開けることはしません。蓋を片端から持ち上げ、完全にずらさずに底皿の上に被せた状態で、開いた隙間から寒天培地を流し込みます。その後、すぐに蓋を閉めてゆっくりと皿を前後左右に揺らし、培地を均等に広げます。シャーレは、一連の操作が雑菌の混入を防ぎながら行えるよう、扱いやすい形状に設計されています。

微生物の培養に使用する際には、事前に滅菌処理が必要です。一般的には、シャーレを新聞紙で2枚程度包み、乾熱滅菌を行います。少数のシャーレを処理する場合は、培地を入れたシャーレごと加圧滅菌にかけることもあります。滅菌済みのプラスチックシャーレは、乾熱滅菌やオートクレーブ（高圧蒸気滅菌器）に対応していないため、基本的に使い捨てとなります。

菌類を培養する際は、シャーレを逆さにして培養することがあります。これは、雑菌が培地表面に落下するのを防ぐためと、乾燥をできるだけ防ぐためです。培地が流し込まれている分、底皿の方が重いため、逆さにすることでより密着度が高まります。ただし、培養栓ほどの密閉性はないため、コンタミネーションへの配慮は常に必要です。乾燥とコンタミネーションを防ぐため、一回り大きい容器に入れて保管することも推奨されます。

シャーレは、その使用法から非常に多数を同時に使用することが多く、実験室では試験管と並んで数の多い容器です。そのため、本来の目的以外にも、浅い容器として様々な用途に用いられます。例えば、高校の理科の実験で、細胞分裂を観察する際にタマネギの根を薬液に浸しておく容器として使用されることがあります。

特殊な型の例

シャーレを用いた実験操作が広範囲に普及するにつれて、特殊なシャーレも開発されています。

例えば、サンプル中の細菌の数と種類を検定する際に用いられる希釈平板法では、サンプルを多段階で希釈した一定量の液体を寒天培地で固めたシャーレ中に加え、一定時間培養後に発生するコロニーを観察します。各コロニーは、元は1個の細菌から増殖するように培地の種類と希釈度が調整されているため、コロニーの形態から菌種を推定し、希釈度から元の菌数を推定することができます。この作業を容易にするため、シャーレの底面に格子が印刷されているものや、コロニーを見つけやすくするために蓋にレンズが仕込まれたものもあります。また、北里柴三郎が発明した嫌気性菌培養用の「亀の子シャーレ」という、フタと本体が一体になった特殊なシャーレも存在します。

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