シュテファン・ルハ

シュテファン・ルハ（ルーマニア語: Ștefan Ruha, ハンガリー語: Ruha István）は、1931年8月17日にルーマニアのカレイで生まれた傑出したヴァイオリン奏者である。彼の生涯は2004年9月28日にクルジュで幕を閉じた。

幼少期からヴァイオリンに親しみ、音楽家としての道を歩み始めたルハは、クルジュ音楽院に進学し、高名なフェレンツ・バローグのもとでその才能を磨いた。アカデミックな基礎を固めた後、彼は実演のキャリアに進む。

1949年、ルハはクルジュにあるロマーニャ歌劇場のヴァイオリン奏者として採用された。その後、彼はオーケストラ内での地位を確実に昇進させていった。1957年には第一ヴァイオリン奏者に抜擢され、翌1958年には弱冠27歳で、その歌劇場のコンサートマスターという重責を担うことになった。これは彼の演奏技術とリーダーシップが高く評価された証である。

コンサートマスターとして活動を開始したこの1958年は、ルハのキャリアにおいて極めて重要な転換点となった。彼はこの年、権威ある二つの国際音楽コンクールに挑戦し、目覚ましい成果を上げた。まず、ソビエト連邦のモスクワで開催された第1回チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門に出場し、見事に第3位に入賞した。このコンクールは、冷戦下において東西の芸術家が競い合う場として特に注目されており、彼の入賞は国際的な名声を一気に高めることとなった。さらに同年、故国ルーマニアのブカレストで開催されたジョルジュ・エネスク国際コンクールのヴァイオリン部門では、頂点となる優勝を勝ち取った。祖国での栄冠は、彼の国内での評価を不動のものとした。

翌1959年にも、ルハの快進撃は続いた。フランスのパリで開催されたロン＝ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門に出場し、ここでも第2位という優れた成績を収めた。わずか二年間の間に、世界の主要なヴァイオリンコンクールで立て続けに上位入賞を果たしたことは、シュテファン・ルハが当時の国際的なヴァイオリン界において、最も将来を嘱望される才能の一人であることを強く印象付けた。これらの成功は、彼のその後の国際的な演奏活動の基盤を築いたと言えるだろう。

演奏家として確固たる地位を確立したルハは、後進の育成にも情熱を注いだ。1963年からは、かつて自身が学んだクルジュ音楽院で教鞭を執り始め、亡くなる前年まで約40年間にわたり、多くの若いヴァイオリン奏者を育て上げた。教育者としての活動と並行して、彼はアンサンブル演奏への関心も持ち続けた。1964年には、自身の名を冠した弦楽四重奏団を結成し、室内楽の分野でも活発な演奏活動を展開した。この弦楽四重奏団は、彼の音楽的ヴィジョンを追求する重要な場となった。

シュテファン・ルハの長年にわたる音楽界への貢献は、ルーマニア政府によって高く評価された。彼は複数の栄誉ある賞や称号を授与されている。1968年には文化勲章を受章し、芸術家としての功績が認められた。1984年にはルーマニア政府より芸術功労賞が贈られ、その活動が国家レベルで称えられた。さらに、2001年には「優秀芸術家」の称号を得て、ルーマニアを代表する芸術家の一人としての地位を確立した。

カレイに生まれ、クルジュを拠点に国際的な名声を得て、教育者としても多大な影響を与えたシュテファン・ルハは、2004年にクルジュで生涯を終えた。彼の残した音楽遺産は、今もなお多くの人々に記憶されている。

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