シュド・アビアシオン

シュド・アビアシオン：フランス航空史における重要な足跡

シュド・アビアシオン（Sud-Aviation、南方航空事業）は、かつてフランスに存在した航空機メーカーで、フランス航空産業の発展に大きく貢献しました。その設立は、1957年3月に遡ります。当時、フランス政府は航空産業の再編を進めており、その一環として、シュド・エスト（SNCASE：南東航空機製造公社）とシュド・ウエスト（SNCASO：南西航空機製造公社）という二つの国営航空機メーカーを合併させました。これがシュド・アビアシオンの誕生です。

SNCASEは、合併以前から独自の航空機開発に取り組んでいました。特に有名なのは、ジェット旅客機「カラベル」です。カラベルは、当時としては画期的な設計思想を取り入れており、胴体後部にエンジンを配置することで、客室の騒音を大幅に低減することに成功しました。また、イギリスのデ・ハビランド コメットの設計を参考に、機首と尾翼のデザインを流用することで、開発期間の短縮とコスト削減を実現しました。カラベルは、1958年に生産が開始され、ヨーロッパを中心に多くの航空会社で採用されました。

1960年代に入ると、シュド・アビアシオンは、新たな挑戦として超音速旅客機の開発に着手します。それが「シュペル・カラベル」計画でした。しかし、超音速旅客機の開発には、莫大なコストがかかることが予想されました。そこで、シュド・アビアシオンは、イギリスのBAC（British Aircraft Corporation）と共同で開発を進めることになりました。1962年11月、両社はコンソーシアムを設立し、超音速旅客機「コンコルド」の開発を開始しました。

コンコルドは、シュド・アビアシオンとBACの技術を結集して開発された、まさに「夢の超音速旅客機」でした。マッハ2を超える速度で大西洋を横断することができ、パリ-ニューヨーク間をわずか3時間半で結びました。コンコルドは、1976年に商業運航を開始し、その優雅な姿と圧倒的な速さで、世界中の航空ファンを魅了しました。

しかし、1970年、シュド・アビアシオンはノール・アビアシオン（Nord-Aviation：北方航空事業）と合併し、アエロスパシアル（Aérospatiale）となりました。その後、アエロスパシアルは、ヨーロッパ各国の航空機メーカーと共同で、エアバス（Airbus）の開発を進めることになります。エアバスは、現在では世界有数の航空機メーカーとなり、ボーイングと激しい競争を繰り広げています。

さらに、アエロスパシアルは、ブリティッシュ・エアロスペース、DASA（ドイツ航空宇宙）と国際的なコンソーシアムを形成し、最終的には2000年7月10日にDASAとスペインのCASAと合併してEADS（European Aeronautic Defence and Space Company）となりました。EADSは、エアバスの親会社であり、ヨーロッパの航空宇宙産業を牽引する存在となっています。

シュド・アビアシオンは、短命な会社でしたが、カラベルやコンコルドといった革新的な航空機を開発し、その技術は後のエアバスへと引き継がれました。シュド・アビアシオンは、フランス航空史における重要な足跡を残したと言えるでしょう。

機体リスト
カラベル
コンコルド
SA 316 アルエットIII
SA 321 シュペルフルロン
SA 330 ピューマ
SA 341 ガゼル

関連項目
航空機メーカーの一覧
シュド・エスト
シュド・ウエスト
ノール・アビアシオン

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