シュノーケル (潜水艦)

シュノーケル（submarine snorkel）

シュノーケルは、潜水艦においてディーゼルエンジンを運転するために使用される吸気管です。この名称は、低地ドイツ語の「シュノルヒェル（鼻）」に由来しています。軍事用語では「スノート」とも呼ばれます。通常動力型潜水艦は、浮上していないときに推進力を維持するのが難しいため、シュノーケルの導入によってその問題が解決されました。

概要

一般的に、通常動力型潜水艦は、一定時間潜航する能力に制約があります。たとえば、ディーゼル・エレクトリック型の潜水艦の場合、艦内での空気供給は限られているため、浮上しているときにしかエンジンを使用できませんでした。そのため、潜航時にはバッテリーを使ったモーターでの推進が主でした。より長く潜航するためには、大容量のバッテリーが必要ですが、艦内のスペースの制約によりその限界もありました。

シュノーケルは、この潜航時間の不足を補うために設計され、水面に突き出た吸気管によって継続的にディーゼルエンジンを運転できるようにします。安全な使用には、浸水を防ぐための弁が欠かせません。初期のシュノーケルは、海水に浸かるとフロートが持ち上がり、吸気口が閉じるという単純な仕組みでしたが、後に電磁弁が採用されるようになりました。

シュノーケルの課題

ただし、シュノーケルにはいくつかの欠点があります。例えば、管の長さによって潜航できる深度が制限されること、また、荒天時には弁が閉まり、艦内の気圧が急激に低下してしまう可能性もあり、使用が制限されることがあります。これにより、シュノーケルの運用は状況によって難しさを伴います。

歴史

シュノーケルの初めての搭載例は、アメリカの技術者サイモン・レークが1894年に開発した潜水艦「アルゴノート」に見られます。その後、1906年には日本初の潜水艦である「第六型潜水艦」でも採用されましたが、初期のシュノーケルは効果が十分ではなく、浸水事故を引き起こすこともありました。

後にオランダ海軍の中佐J・Jウィッカースが改良を行い、フロート付きのバルブを活用した新しい設計が開発されました。これにより、海水の侵入を効果的に防ぐことができたため、O-19級潜水艦やその後のO-21級にも装備されました。

1940年にドイツ軍がオランダを占領すると、ウィッカースのシュノーケルが搭載された潜水艦も捕らえられ、ドイツでも研究されることとなります。ドイツ海軍は、Uボートの潜航時間を更に延ばすためにシュノーケルの改善策を模索し、使用法が見直されました。特に大戦が進むにつれ、連合軍の監視活動が盛んになったことで、ドイツ側はこの技術の重要性を再認識しました。

日本海軍の取り組み

日本海軍も、太平洋戦争中にシュノーケルの実用化を目指しました。1945年には「水中充電装置」と名付けたシュノーケルを導入しましたが、主に補助発電機用に装備されました。この装置は昇降式であり、主機関に直接吸気するものではありませんでした。アメリカ海軍も、ドイツの潜水艦を研究することによりシュノーケルの重要性を認識し、戦後は多くの国で通常動力型潜水艦に装備されることとなりました。

現在の状況

現在、シュノーケルは多くの国で通常動力型潜水艦に応用されていますが、依然として浸水事故が起きることもあります。21世紀においても、関連する事故は報告され続けています。また、戦車等の装甲戦闘車両でも、河川などを通過する際にハッチに取り付けられることがあります。

シュノーケルは、潜水艦の歴史の中で重要な役割を果たしており、今後もその技術の進化が期待されます。

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