シュパンツィヒ四重奏団

シュパンツィヒ四重奏団

シュパンツィヒ四重奏団は、1790年代にウィーンで創設された弦楽四重奏団です。創立者はヴァイオリニストのイグナーツ・シュパンツィヒで、彼は音楽家ベートーヴェンの親しい友人であり、四重奏団はその多くの作品初演を担当しました。シュパンツィヒ四重奏団は、数度の中断やメンバーの変動を経て、長い間にわたり活動を続けてきました。

発足と初期の活動

シュパンツィヒが1795年にリヒノフスキー侯爵のために設立した非公式の弦楽四重奏団がその始まりです。メンバーは固定されていなかったものの、頻繁に参加していたのが、ルイ・スィナ（第2ヴァイオリン）、フランツ・ヴァイス（ヴィオラ）、ニコラウス・クラフト（チェロ）でした。1800年には、ベートーヴェンの最初の弦楽四重奏曲集である作品18の初演も行っています。

1805年にはシュパンツィヒが自身の四重奏団を正式に設立しました。初代メンバーにはヨーゼフ・マイゼダー（第2ヴァイオリン）、アントン・シュライバー（ヴィオラ）、アントニーン・クラフト（チェロ）が加わりました。彼らの最初の演奏会は、後にレストランRömischer Kaiserとなる私邸Heiligenkreutzerhofで開催されました。

ラズモフスキー伯爵との関係

1808年になると、ラズモフスキー伯爵からの依頼を受けて、シュパンツィヒは新たな弦楽四重奏団を組織しました。この団体は長期にわたる契約で結ばれたメンバーから成り、ルイ・スィナやフランツ・ヴァイスの他、ヨーゼフ・リンケ（チェロ）が参加しました。12月には、音楽家兼作曲家のヨハン・フリードリヒ・ライヒャルトが、ラズモフスキーの演奏会に出席し、その演奏の巧妙さやシュパンツィヒの演奏技術について高く評価しています。

後年の活動と変遷

しかし1815年の大晦日にはラズモフスキーの宮殿が火災に見舞われ、シュパンツィヒ四重奏団は解散することとなります。シュパンツィヒはこの後、サンクトペテルブルクを拠点に演奏旅行を行い、数年後にウィーンに帰還。1823年に弦楽四重奏団を再結成しましたが、メンバーは一部変更され、カール・ホルツが新たに第2ヴァイオリンを担当することとなりました。

また、1824年にはベートーヴェンから新作の依頼を受け、シュパンツィヒ四重奏団が第12番作品の初演を行いました。しかし、ベートーヴェンは演奏に対して不満を示し、シュパンツィヒを批判したエピソードもあります。さらに、彼らはベートーヴェンの第13番および第15番、またシューベルトの弦楽四重奏曲第13番の初演も手掛けました。

シュパンツィヒの死後

シュパンツィヒが1830年に逝去すると、ヴァイオリニストのレオポルト・ヤンサによって新たに弦楽四重奏団が結成され、カール・ホルツやヨーゼフ・リンケがそのメンバーとして加わりました。この団体は、1849年にヤンサがロンドンに移るまで活動を続けました。その後、団はヘルメスベルガー四重奏団として知られるようになり、シュパンツィヒ四重奏団の活動を受け継いでいきました。

シュパンツィヒ四重奏団は、当時の音楽文化に大きく貢献しただけでなく、後世にわたってその影響をあたえ続けています。

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