シュベツォフ ASh-82

シュベツォフ ASh-82/M-82：ソ連が生んだ傑作航空エンジン

シュベツォフ ASh-82（ロシア語表記：Швецов АШ-82 / М-82）は、ソビエト連邦で開発された空冷二重星型14気筒の航空機用エンジンです。その設計は、9気筒の ASh-62（M-62）エンジンを基に、気筒数を増やした発展型と言えます。また、ライセンス生産を行っていたアメリカのライト R-1820「サイクロン」エンジンの影響も受けています。

1940年から生産が開始され、その高い信頼性と性能から、様々な航空機に搭載されました。軍用機としては、Tu-2 爆撃機、Pe-8 重爆撃機、La-5 戦闘機、La-7 戦闘機などが挙げられます。また、旅客機である Il-14 にも搭載され、ソ連の航空史を支えたエンジンと言えるでしょう。総生産数は70,000基を超え、その普及度の高さが伺えます。

主な派生型

ASh-82: 離陸出力1,700 hpを発揮する初期型です。
ASh-82F: 冷却系統やオイル系統に改良が加えられ、信頼性が向上しました。
ASh-82FN: 燃料噴射装置を備え、出力が1,850 hpまで向上した高性能型です。Pe-8 や La-7 など、より高性能を求められる機体に搭載されました。
ASh-21: ASh-82 を元に開発された単列7気筒エンジンです。1947年に生産が開始され、Yak-11 練習機に搭載されました。ASh-82 の設計思想を受け継ぎつつ、より小型軽量化された派生型と言えます。

主な諸元 (ASh-82)

タイプ: 空冷星型複列14気筒
ボア×ストローク: 155mm × 155mm
排気量: 40.946 L
乾燥重量: 868 kg
圧縮比: 7.05
燃料供給方式: 燃料噴射装置式
出力:
1700hp / 2,600rpm （離昇出力）
1530hp / 2,400rpm （高度1,550m）
1330hp / 2,400rpm （高度4,550m）
比出力: 41.5 hp/L
出力重量比: 1.96 hp/kg

主な搭載機

ソビエト連邦
民間機: イリューシン Il-14
戦闘機: ラボーチキン La-5、La-7
爆撃機: ツポレフ Tu-2、ペトリャコフ Pe-8

関連項目

ツマンスキー M-87 / M-88 - ソ連国内における競合エンジン。

ASh-82 は、第二次世界大戦から冷戦時代にかけて、ソ連の航空機産業を支えた重要なエンジンの一つです。その設計思想は、後のエンジン開発にも大きな影響を与えました。

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