燃料噴射装置

燃料噴射装置とは

燃料噴射装置は、内燃機関で液体燃料を霧状に噴射するための装置で、特にガソリンエンジンなどの予混合燃焼機関において重要な役割を果たします。これは、エンジンが稼働する際に、瞬時に燃料を燃焼させるために必要な技術であり、燃料と空気を効率よく混ぜることが求められます。

概要

内燃機関では、燃料をシリンダー内で爆発的に燃焼させるため、液体燃料を空気と混ぜ合わせた後に霧状にしてシリンダーに供給する必要があります。これに対し、20世紀中に広く使用されたキャブレターは、シンプルではありましたが、空燃比の制御が困難で、排出ガス規制に対する適応が難しいという問題がありました。その結果、2000年代初頭以降、電子制御式の燃料噴射装置が主流となり、キャブレターは徐々に姿を消しました。

ただし、電子制御式燃料噴射装置は、複雑な構造を持ち、高価であり、自動車以外の一部の機械ではキャブレターが使用され続けています。

歴史

キャブレターは、気圧や温度の変化に影響を受けやすく、特に航空機ではその安定性に問題がありました。これにより、重力を利用せずにガソリンを加圧して噴射する機械式燃料噴射装置への移行が進みました。第二次世界大戦中のドイツ空軍では、この機械式燃料噴射装置が多くの航空機に使用され、特にメッサーシュミットBf109が著名です。その後、自動車にも適用され、1954年にはメルセデス・ベンツ300SLが初のガソリン直噴エンジンとして市場に登場しました。

環境意識の高まりに伴い、米国では排ガス規制が強化され、より厳密なエンジン制御が求められるようになりました。その結果、デジタル技術を用いた燃料噴射制御が進展し、電子制御式が普及しました。

動作原理

燃料噴射装置は、燃料タンクからポンプを通じて高圧で燃料を供給し、インジェクターを介してシリンダーに燃料を噴射します。電子制御式インジェクターでは、エンジンの負荷や回転速度に応じて噴射量やタイミングを精密に調整し、燃焼効率を最大限に引き出します。これにより、出力の向上、始動性の改善、燃費の向上、排出ガスの削減が実現されます。

制御方式と種類

燃料噴射装置には、シングルポイントインジェクション（SPI）とマルチポイントインジェクション（MPI）などの方式があります。SPIは全シリンダーへの燃料供給を一括で行いますが、MPIは各シリンダーごとにインジェクターを設け、よりきめ細かな燃料供給が可能です。近年の主流はMPIで、特にシーケンシャル噴射方式が一般的です。

メンテナンス

インジェクターはキャブレターに比べて不具合が少ないですが、経年劣化や燃料ポンプの故障によって性能が低下することがあります。定期的な点検と必要に応じた部品の交換が求められます。特に、インジェクター内部のフィルター詰まりやオリングの劣化に注意が必要です。

このように、燃料噴射装置は内燃機関の燃焼効率向上に寄与し、環境対策としても重要な役割を果たしています。

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