シュマルカルデン戦争

シュマルカルデン戦争

シュマルカルデン戦争は、1546年から1547年にかけて神聖ローマ帝国で繰り広げられた、カトリック勢力とプロテスタント勢力との間の武力衝突です。この戦争は、宗教改革後のヨーロッパにおける宗教的・政治的な対立が表面化した出来事として、重要な意味を持っています。

背景

16世紀初頭、マルティン・ルターによる宗教改革が始まり、神聖ローマ帝国ではカトリック教会に対する批判が高まりました。これに呼応して、多くの諸侯や都市がプロテスタントの信仰を受け入れました。1531年、プロテスタントの諸侯たちは、カトリックの神聖ローマ皇帝カール5世に対抗するため、シュマルカルデン同盟を結成しました。

同盟結成の背景には、皇帝がオスマン帝国との戦いに注力し、帝国内の問題への対応が遅れていたことや、ドイツ農民戦争における諸侯の不満がありました。また、フランス王国がカトリックを支援するなど、国際的な政治状況も複雑に絡み合っていました。

1542年、フランスが神聖ローマ帝国との戦争を開始すると、皇帝の権力が弱まった隙をついてシュマルカルデン同盟は勢力を拡大しました。これに対し、カール5世は1544年にフランスとの戦争を終結させ、帝国内の反乱鎮圧に乗り出します。こうして、1546年にシュマルカルデン戦争が勃発しました。

経過

戦争初期、皇帝軍は各地で勝利を収め、1547年のミュールベルクの戦いでは、シュマルカルデン同盟の指導者であったザクセン選帝侯ヨハン・フリードリヒとヘッセン方伯フィリップを捕虜としました。皇帝はカトリック優位のアウクスブルク仮信条協定を締結させ、プロテスタント勢力を抑え込もうとしました。

しかし、1552年にはザクセン選帝侯モーリッツ（ヨハン・フリードリヒの又従弟でフィリップの婿）が反乱を起こし、皇帝は苦境に立たされます。モーリッツは当初カール5世に味方して選帝侯の地位を得ていましたが、後にプロテスタント側に寝返りました。同年には、アルブレヒト・アルキビアデスによる反乱（第二次辺境伯戦争）も発生し、混乱が続きました。モーリッツはこの戦いで戦死しましたが、1554年に反乱は終結しました。

結果

1555年、アウクスブルクの和議が成立し、神聖ローマ帝国においてプロテスタントが公認されることになりました。これにより、領邦君主は自らの領土における宗教を選択する権利（領邦教会制）を持つことが認められ、「カトリックか、プロテスタントか」という選択肢が与えられることになり、帝国内の宗教的対立は緩和に向かいました。

しかし、アウクスブルクの和議は、個人の信仰の自由を認めるものではなく、またカルヴァン派は公認されませんでした。このため、その後も宗教的な対立はくすぶり続け、17世紀の三十年戦争へと繋がっていくことになります。

主要人物

カール5世：神聖ローマ皇帝。カトリックを擁護し、シュマルカルデン同盟と戦いました。
ヨハン・フリードリヒ：ザクセン選帝侯。シュマルカルデン同盟の指導者の一人。
フィリップ：ヘッセン方伯。シュマルカルデン同盟の指導者の一人。
モーリッツ：ザクセン選帝侯。当初はカール5世に味方しましたが、後にプロテスタント側に寝返りました。

関連項目

信仰告白主義化
ヴィッテンベルクの降伏
* 三十年戦争

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