シュラクサイ包囲戦 (紀元前343年)

第二次シュラクサイ包囲戦：民主政回復への道

第二次シュラクサイ包囲戦は、紀元前344年から紀元前343/342年にかけて、シケリア（現在のシチリア島）のシュラクサイで発生した紛争です。この戦いは、シュラクサイ生まれのレオンティノイの僭主ヒケタスと、当時のシュラクサイの僭主ディオニュシオス2世の間で始まりました。

戦争の背景：カルタゴとコリントスの介入

この紛争が複雑化した背景には、カルタゴとコリントスの介入がありました。カルタゴは、シケリアにおける勢力拡大を目論み、ヒケタスと同盟を結びました。一方、コリントスは、将軍ティモレオンを派遣し、シュラクサイに民主政を復活させることを目指しました。

シュラクサイ市民の一部は、ディオニュシオスの圧政に苦しみ、レオンティノイの僭主ヒケタスの元へ亡命していました。ヒケタスは、ディオニュシオスに匹敵する陸軍を有しており、亡命者たちは彼を指導者として、ディオニュシオスとの戦いを開始しました。

カルタゴは、シケリア西部を支配していましたが、この混乱に乗じて勢力を拡大しようとしました。カルタゴが大軍をシケリアに派遣すると、ヒケタスはディオニュシオスに対抗するため、シュラクサイの母都市であるコリントスに救援を求めました。

しかし、ヒケタスの真の目的は、シュラクサイに民主政を復活させることではなく、自らがシュラクサイの僭主となることでした。彼は密かにカルタゴと交渉しながら、コリントスに救援を求めていました。コリントスが支援を断ると予想し、その場合、亡命者たちにカルタゴとの同盟を説得しやすくなると考えていたのです。

予想に反して、コリントスはティモレオンを指揮官とする遠征軍を送ることを決定しました。ヒケタスは、コリントスへの交渉使節を送るとすぐにカルタゴと同盟を結び、コリントスに対して、シケリアへの遠征は時間がかかりすぎるとして中止するように書簡を送りました。この裏切り行為にコリントスは激怒し、ティモレオンは遠征に参加する兵士を容易に集めることができました。

ティモレオンの到着とシュラクサイの占領

紀元前344年、ティモレオンはコリントスを出発し、シュラクサイへ向かいました。彼は700人の傭兵を7隻の船に乗せており、途中でレウカディアとコルフから3隻が加わりました。イオニア海の航海中、ティモレオンは神々しい現象を目撃したと伝えられています。

一方、ヒケタスはディオニュシオスの支配下にあるシュラクサイを包囲していました。彼は防護柵で囲まれた野営地を設営しましたが、補給不足のため包囲を解きました。ヒケタスが軍と共にレオンティノイに戻る途中、ディオニュシオスはこれを追跡し、背後から攻撃しました。奇襲にもかかわらず、ヒケタスはディオニュシオスを撃破し、傭兵3,000人が殺害された後、ディオニュシオス軍は敗走しました。ヒケタスはディオニュシオスを追撃し、シュラクサイの一部を占領しました。ディオニュシオスは旧市街であるオルティジャ島に篭城しました。

ティモレオンは、ヒケタスがシュラクサイを部分占領した3日後に、レギオンに到着しました。ヒケタスはティモレオンがシケリアに渡海するのを阻止しようとし、レギオンに20隻の三段櫂船と特命使節団を送りました。特命使節団は、ティモレオンに対し、シュラクサイでの戦争はほぼ終了したのでコリントスに戻ってほしいと懇願しました。また、ヒケタスの顧問となることや、同盟を組むことも提案しました。ティモレオンは、使節団を欺くために、彼らの希望を受け入れると装い、レギオン市民を証人としました。しかし、カルタゴ人が集会に出ている間に、ティモレオンは密かにレギオンを出航し、タウロメニオンに向かいました。タウロメニオンの僭主アンドロマカスはティモレオンを支援し、市民にティモレオンに合流するよう促しました。

その後、ティモレオンはシュラクサイ全土を占領し、ディオニュシオスを降伏させ、コリントスに亡命させました。これにより、ティモレオンはシュラクサイを完全に掌握しました。

戦後：民主政の復活と新たな植民

シュラクサイを占領した後、ティモレオンはオルティジャ島の僭主の宮殿と砦を取り壊し、シュラクサイに民主政を復活させました。彼はコリントスに植民者を送るように依頼し、コリントスや他のギリシア都市から多くの人々がシュラクサイに移住しました。これにより、シケリアの人口は増加し、シュラクサイは再び活気を取り戻しました。

ティモレオンは、ヒケタスを最終的に打ち破り、処刑しました。また、シケリアの全ての僭主を退位させることに成功しました。彼はカルタゴとも平和条約を締結し、シケリアに安定をもたらしました。

第二次シュラクサイ包囲戦は、ティモレオンの活躍によって、シュラクサイに民主政が復活し、シケリア全体に平和がもたらされた重要な出来事でした。

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