シュンクシタカラ湖

シュンクシタカラ湖：人知れず眠る原生林の秘境

北海道釧路市阿寒町に存在するシュンクシタカラ湖は、1970年代に人工衛星によってその存在が確認された、日本国内で最後に発見された湖として知られています。しかし、地元住民は古くからその存在を知っており、1920年の国土地理院地図にも「シュンクシタカラ沼」として記載されているという歴史的な経緯も持ち合わせています。

湖の名はアイヌ語に由来します。「シュンク」はエゾマツ、「シタカラ」は鳥の鳴き声を意味しており、この地名の由来には、夜明けに鶴の高さで神様が「シタカラシタカラ」と鳴きながら飛んでいくという興味深い伝承が伝えられています。近隣の地名に「舌辛」という漢字表記が見られるのも興味深い点です。

シュンクシタカラ湖は、周囲を針広混交樹林の原生林に囲まれた、まさに秘境と言える場所です。湖水は驚くほど透明度が高く、湖底に沈む巨木が水面から見えるほどです。エゾライチョウやエゾシカなど、多様な動植物が生息しており、北海道によって「シュンクシタカラ鳥獣保護区」に指定されているほど、豊かな生態系が維持されています。かつてはヒメマスの放流も行われたものの、僻地であることから中止されました。

湖へのアクセスは容易ではありません。未舗装の林道、いわゆるダート路であるシュンクシタカラ林道（発見沢林道とも呼ばれる）を通る必要があります。この林道は案内表示が少なく、崖部分にはガードレールも整備されておらず、車両の滑落の危険性も伴います。約21キロに渡る区間は完全に無人地帯であり、ヒグマの生息地でもあるため、十分な注意が必要です。携帯電話の電波も通じないため、万全の準備をしてから訪れるべきです。

さらに、2012年7月時点では、倒木や雨による流失、残雪による崩落などにより、シュンクシタカラ林道は通行止めとなっています。そのため、雄別経由の北陽ヘルプナイ林道経由、または雄別林道～大石沢林道経由で迂回する必要があります。いずれのルートも、未舗装路であり、悪路であることを覚悟する必要があります。道中には沼の沢林道の案内表示があり、そこからさらに沢沿いの急な坂道を登り切ると、ようやくシュンクシタカラ湖の姿を現します。

シュンクシタカラ湖は、そのアクセス困難さゆえに、手つかずの自然が今も色濃く残る、まさに秘境中の秘境と言えるでしょう。その神秘的な雰囲気、豊かな自然、そしてアイヌ文化の痕跡を感じさせる地名など、多くの魅力を秘めたこの地は、冒険心をくすぐる、忘れられない体験を与えてくれるに違いありません。しかし、訪れる際には、十分な準備と安全対策を講じることを強くお勧めします。

もう一度検索